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2005年度神戸市予算の分析

                  2005.3.3  文責 あわはら富夫                                                                  
1、2005年度当初予算額 5、企業会計収支の現状
2、歳入並びに歳出について 6、特別会計
3、財源対策 7、今年度予算の問題点について
4、市債について
       
1、2005年度当初予算額

   予算額          前年比       実質予算額
一般会計 1兆1053億円 (+34.4%)      8120億円  (−1.3%)
特別会計 1兆5587億円 (+22.8%)    1兆2689億円  (−0.8%)
合計   2兆6640億円 (+27.4%)     2兆 915億円   (−1.0%)

・全体予算が対前年比27.4 %の伸びになっているが、復興基金への出捐・貸付金にかかる市債償還額(一般会計2933億円、特別会計3000億円、予算総額5933億円)が含まれているため。それを差し引くと、実質予算額は、対前年208億円(対前年比1.0%)減のの減額予算となっている。

2、歳入並びに歳出について

@、(歳入の特徴)  

・市税収入は6年連続の減が続いていたがで、7年ぶりに前年度より2.3%増で2500億円と55億円増加した。しかし、市民税個人分や固定資産税は依然として減少傾向にあり、今回は市民税法人分や事業所税などの増加で減少傾向に歯止めをかけたということ。

景気が底を打ったように見えるが、企業の合理化でのスリム化によるもので、それが更なる個人消費の落ち込みを誘発しているともいえる。国では景気は持ち直したと言いながらこの数ヶ月間、景気指標が再び悪化していることから、今は「踊り場」との表現がなされている


景気動向は依然として不透明だ。企業業績が好転に転じたからと言って今後、市民税法人分が増加に転じるかは微妙だ。

しかも、18年に固定資産の評価換えが行われることから、更に固定資産税収入が落ち込む可能性があり予断を許せないところだ。しかし、98年度3000億円に迫っていた市税収入と比べると歯止めがかかったというものの、今年度で500億円も落ち込んだいることになる。

(単位:億円)

・地方交付税は1200億円と対前年で90億円増で復興基金分を除くと歳入総額の14.8%を占め対前年比で1.3%増となる。ちなみに、震災前の平成6年には地方交付税が410億円で、震災復興で地方交付税が増えたこともあるが、それ以上に神戸市の財政力が落ちていることを証明している。地方交付税額では政令市で札幌に次いで2番目に多い自治体になっている。

神戸市は必要性の議論よりも地方交付税の裏打ちがある事業には積極的に手を上げてきたことが、地方交付税への過度の依存を招き、国の地方交付税特会の大幅赤字の中、三位一体改革の中で他の自治体に比べて大きな影響を受ける危険性がある。

・諸収入の増は復興基金からの貸付金返還(2933億円)が入っているため。

A、(歳出の特徴)

1,目的別内訳
         
・民生費については前年比3.1%の増だが、そのほとんどは生活保護など扶助費の増で、震災後急増している。また教育費の伸びは、5.1%で、学校の耐震化補強費。土木費・住宅費や商工費、農政費などはシーリングの実施などでほとんどが横ばいか減少している。

・都市計画費の32.2%の減は、復興区画整理事業や再開発事業などが収束に近づいているため。

単位:億円  

2,性質別内訳

・生活保護費と児童福祉費などの扶助費が今年度も昨年に引き続き55億円増え、この2年間で130億円も増えている。長引く不況と震災の影響で、生活保護が飛躍的に増加し、補正予算を組むことがあたりまえのような状況になっている。

・借金払いである公債費は復興基金への貸付金にかかる市債償還財源(2933億円)を除くと1466億円とピークであった前年度1647億円から182億円減で前年度に比べて11.1%減となっている。


・投資的経費は昨年度より更に64億円も落ち込み718億円となり、平成5年度で2733億円あったことを思うと2000億円以上も減少している。また、物件費・補助費等の経費も平成11年度1764億円であったものが平成17年度予算案では1138億円と626億円も削減されている。

投資的経費といって学校や市営住宅や道路補修など日常的な市民生活につながるものも多く、これが極端に減らされるということは市民生活に大きな影響がでることを意味する。建設局では管理する道路路線が増えているにも関わらず道路補修費が平成11年に25億円あったものが、平成15年予算では22億円に削減されている。また、生活文化観光局では市民文化振興財団への補助金が平成10年10億円が平成14年には8億2千万円に削減、また、各区民センターの自主事業予算も平成10年に14億6千万円あったものが11億2千万円と3億円もの削減が行われている。教育委員会では青少年科学館や博物館などの運営に対しても、一般財源の投入実績をみると平成10年に9億5千万あったものが平成15年では6億円にまで減ってしまっている。そのため、資料代が大きく削減され展示物の購入などにも影響がでている。

また一方、2700億円を越える過去の投資的経費はが、維持管理費を増大させ、また公債費を増やし、現在自由に使える財源を圧迫している。そして、人件費、扶助費、公債費の義務的経費の構成比が51%と財政の硬直化がすすんでいる。


3、財源対策

(2005年予算での財源対策)          75億円
@公債基金からの繰替運用           20億円
A財産収入                    25億円
B新都市整備会計からの支援          5億円
C職員給与の削減                25億円

平成12年度からの財源対策の実績
(単位:億円)
12年度 13年度 14年度 15年度 16年度当初予算 17年度当初予算
基金の取崩し 201 1
財産収入 30 48 85 50 50 25
企業会計からの支援 35 24 17 12 30 5
市債 7 9 10 8 50
職員給与の削減 25 25 25
公債基金からの借入 150 50 20 50 20
273 232 162 115 205 75

・財源対策の基金は12年度で底をついた。公債基金(1600億円)の繰替運用も公債基金繰替運用上限の500億円まで残り約103億円。

・財産収入で今回25億円を計上したが、そもそも処分できる普通財産(公有地)は約160億円(平成13年度)で、15年度85億円、16年度50億円、今年度で25億円を予算措置している。決算ベースでの検証は必要だが、今回でほとんど底をつく状況だ。大口の土地処分が終わっていることを考えると、ほとんどが小口の土地で25億円を確保できるかどうかの見通しも不確かと言えそう。行政財産を普通財産に変えて売却することになるが、小学校や高校など統合などで廃校になった土地が、この間民間業者に売却された。本来、地域のコミュニテイなどにとって有効な土地利用ができる学校用地がである。例を挙げるならば、小野柄小学校が洋服の青山に、赤塚山高校の一部が東急不動産なでである。

・新都市整備事業からの支援は今年度5億円。新都市整備事業会計から通常は35億円の支援が続いていたが、ここ4年間で24億円、18億円、12億円、15億円で、今年度は5億円になってしまった。神戸空港の建設で多額の起債を発行し、宅地分譲も進まず、ポーアイ2期での土地処分もうまくいかない中で、5億円しか見込めなかったというところか。

・また、平成16年度予算編成後の収支不足は205億円で、更に三位一体改革の影響で15億円が収入減に。しかし、贈与税や交付金や公債費など財政状況の変化で95億円が収入増に。結果、平成17年度予算編成前の収支不足額は125億円に。その対策として、恒久的収支改善策として経常的経費のシーリング40億円、臨時予算のシーリング56億円、人件費の削減で14億円で合わせて110億円の支出を削減した。そして、特別枠の新規事業で60億円を予算化した。それに、財源対策として上記の75億円の歳入増対策が行われ、17年度予算編成前の125億円の収支不足額対策を行ったということだ。経常経費の削減は既に限界に達しており、三位一体の国の財政改革が平成18年度に生活保護等の補助率引き下げの動きがあり、また同じ平成18年に固定資産の評価替えあり、神戸市のように生活保護予算の大きいところで固定資産税に大きく依存している都市は深刻な影響を受ける可能性がある。しかし、これ以上の臨時財源対策には限界があり、極めて難しい状況だ。

・平成5年から臨時財源対策が行われているが、その総額は平成17年度予算までに5560億円にも上るのである。この13年間になんと1年の一般会計予算の約3分の2が臨時対策財源で消えたと言うことである。


4、市債について

@今年度の発行額と公債費

1,(市債)

・一般会計で501億円で前年度612億円から111億円減に。
・特別会計・企業会計については借換債を除くと706億円(前年度887億円)と対前年181億円減の市債を新たに発行。一般会計も含めて1033億円の市債発行となっている。市債の新たな発行を抑えようとの方針が貫徹されているわけでなく。空港島埋立てなど新都市整備事業会計で85億円と前年度354億円から269億円も減となり、市債を新たに発行する空港埋立事業が終わりに近づいたため。しかし、平成17年度末残高見込みでの神戸空港関連の港湾事業会計とこの新都市整備事業会計の両事業でなんと1年間の神戸市の一般会計予算に近づく7151億円を越える借金を抱えることに。一般会計でいくら市債の発行を抑えようとしても、収益事業でたくさんの市債を発行する仕組みになっている。

2,(公債費)

・一般会計での公債費は復興基金への貸付の市債償還を除くと1466億円(前年度1648億円)。公債費が減少して市税収入(2500億円)が伸びても、市税収入の58%が依然として借金払いに。つまり収入の約6割が借金返しに。家計でいえば20万円の収入で12万円がローンの返済に回るということなる。

・企業会計・特別会計では起債の償還が今年度1979億円(前年度2050億円、一昨年度1779億円)。借換債(今年度1263億円、前年度872億円)と復興基金への貸付の市債償還を除けば一般会計・公債基金からの繰入と合わせると3445億円(前年度3698億円、一昨年度3379億円)も借金返しすることになる。
市税収入を945億円も超えた借金返しが行なわれているということだ。企業会計が破綻すれば、20万円の収入では払えきれない状況になるということである。

A、市債の現在高と推移(神戸市都市経営の破綻)

・2005年度末見込で市債残高は2兆8054億円(前年度末見込3兆2031億円)で市債残高は前年度3977億円減ることに。しかし、復興基金の市債償還(2933億円)を差し引くと1044億円が実質的な残高減に。2805億円を赤ちゃんまで入れて150万人で割ると市民一人あたり187万円の借金を抱えることに。

平成17年度市債収入及び年度末現在高(単位:千円)
会計名 市債収入 市債残高(見込)
一般会計 50,139,000 1,155,869,677
特別会計 17,403,779 462,764,674
市営住宅事業費 771,000 177,780,277
その他 16,632,779 284,984,397
企業会計 353,783,000 1,186,794,990
下水道事業会計 9,054,000 156,806,286
港湾事業会計 1,661,000 347,469,429
新都市整備事業会計 8,500,000 367,738,360
病院事業会計 640,000 15,677,277
自動車事業会計 1,420,000 8,931,441
高速鉄道事業会計 12,252,000 235,831,323
水道事業会計 2,000,000 49,972,266
工業用水道事業会計 256,000 4,368,608
総 額 103,325,779 2,805,429,341

・今年度の一般会計の公債費は1466億円。ところが元金償還見込みは638億円、そして、減債積立金は391億円で、427億円は利子の支払いだけで消えていくことになる。バブル前の利子の高いものも抱え、いくら公債費を積んでも利子の支払いだけで消えていく仕組みになってしまっている。

今回、職員のリストラ、経常経費の削減、臨時予算の削減などで収支不足額125億円の解消が行われたが、それをはるかに超える金額が一般会計の利子の支払いだけで消えていってしまうということである。バブル期の事業の付けである利子払い等で427億円が消えていくことを考えると、過去の財政運営の反省が必要だ。過去の借金の返済で、現在の市民が苦しむという構図になっている。

神戸市を支えてきた起債主義がこういう形で破綻しているということだ。世代間公平論を主張していた神戸市当局の起債主義肯定論は過去の借金で今の世代が苦しむという現実となっている。

平成17年度一般会計公債費の内訳(単位:億円)
公債費 1,466
元金 638
利子 427
公債諸費 70
一時借入金利子 30
減債積立金 391

平成15年度末市債会計別利率別現在高(単位:千円)
 会計利率 一般会計 構成比  特別会計 構成比 企業会計 構成比 全会計 構成比
0.00% 38,609,145 2.5 2,108,094 0.5 3,201,290 0.3 43,918,529 1.4
〜1.0%以下 12,921,000 8.3 72,332,960 15.7 155,098,181 12.7 356,352,141 11
〜2.0%以下 404,438,998 26.2 131,396,192 28.6 452,552,122 37 988,387,312 30.5
〜3.0%以下 388,484,376 25 150,277,363 32.7 258,860,152 21.2 797,621,891 24.7
〜4.0%以下 190,279,999 12.3 47,881,278 10.4 87,705,027 7.2 325,866,304 10.1
〜5.0%以下 354,451,750 22.8 36,168,106 7.9 67,915,409 5.6 458,535,265 14.2
〜6.0%以下 20,221,695 1.3 7,750,819 1.7 28,307,806 2.3 56,280,320 1.7
〜7.0%以下 20,640,216 1.3 7,789,211 1.7 64,175,542 5.3 92,604,969 2.9
〜8.0%以下 5,387,697 0.3 3,840,487 0.8 70,923,163 5.8 80,151,347 2.5
〜9.0%以下 895,947 0.1 895,947 0.0
〜9.5%以下 30,860,000 2.5 30,860,000 1.0
合 計 1,551,434,876 100.0 459,544,510 100.0 1,220,494,639 100.0 3,231,474,025 100.0
平均利率(%) 2.79 2.39 2.82 2.74

B、公債費比率と起債制限比率について

起債制限比率の推移
12年度 13年度 14年度 15年度 16年度見込み 17年度見込み
起債制限比率 23.40% 24.20% 24.70% 25.80% 26%程度 24%程度

・12年度で23.4%13年度で24.2%、14年度で24.7%、15年度で25.8%、16年度見込みで26%とピークとなり、今回の予算で24%と若干好転している。しかし、危険水域は変わっていない。

20%を越えると一般単独事業債が起こせなくなる。自治体財政の破綻を食い止めるためにある手法で、一般会計の市債が対象となるが、企業会計など収益事業の市債については計算の対象とならない。今年度の予算を見ても起債制限比率を押し上げる一般会計の市債の発行額は減らそうとしているが、起債制限比率の計算に含まれない企業会計など収益事業については市債の発行を抑える必要はなく、したがって空港事業や港湾事業、新都市整備事業、高速鉄道事業などではまだまだ市債が発行できると言うことだ。

神戸の場合、本来であれば一般単独事業債は認められないところだが、震災特例で認められている。震災がなければ起債制限で大変になっているところだ。財政的には震災を理由にして、通常事業を震災復興事業に含めて、補助率の高い事業に仕立てそして、起債制限比率が20%を超えても特例で一般単独事業債が認められるなど、震災に財政運営が助けられているというのが実態だ。

しかし、この特例も平成20年度までに起債制限比率を20%以下にすることが前提であると、国に約束させられているということで、行政経営方針による指定管理者制度による民間委託の推進や新規採用の抑制など人件費の削減などが至上命題として行われている。
義務的経費平成16年17年の比較
区   分 平 成16 年 度 平 成17 年 度 増  A  減
当初予算額 構成比 当初予算額 構成比 金  額 伸率
人  件  費 136,491,698 16.6 133,173,043 16.4 ▲3318655 ▲2.4
扶  助  費 127,374,462 15.5 132,957,720 16.4 5,583,258 4.4
公  債  費 164,778,229 20.0 146,564,725 18.0 ▲18213504 ▲11.1
 小 計(義務的経費) 428,644,389 52.1 421,695,488 50.8 ▲15948901 ▲3.7
投資的経費 78,205,922 9.5 71,858,108 8.9 ▲6347814 ▲8.1
補 助 事 業 50,038,792 6.1 43,397,596 5.4 ▲6641196 ▲13.3
単 独 事 業 28,167,130 3.4 28,460,512 3.5 293,382 1.0
貸 付 金 121,201,365 14.7 119,280,963 14.7 ▲1920402 ▲1.6
繰 出 金 73,202,224 8.9 87,914,855 10.8 14,712,631 20.1
積 立 金 6,440,266 0.8 6,497,919 0.8 57,653 0.9
物 件 費 等 114,892,381 14.0 113,767,492 14.0 ▲1124889 ▲1.0
合   計 822,586,547 100.0 812,014,825 100.0 ▲10571722 ▲1.3

 
5、企業会計収支の現状


平成17年度企業会計収支(単位:万円)
会  計  名 収 益 的 収 入 収 益 的 支 出 収  支
下水道事業会計 (32,991) (33,112) (▲121)
26,159 25,384 775
港湾事業会計 (21,742) (21,678) (64)
22,726 21,811 915
新都市整備事業会計 (25,214) (24,611) (603)
26,962 26,412 550
病院事業会計 (35,320) (36,048) ▲728
32,794 33,381 ▲587
自動車事業会計 (16,759) (19,070) (▲2,311)
15,535 16,764 ▲1,229
高速鉄道事業会計 (25,300) (30,558) (▲5,258)
24,147 28,739 ▲4,592
水道事業会計 (39,720) (40,092) ▲372
39,711 39,422 289
工業用水道事業会計 (1,454) (1,349) 105
1,465 1,425 40
合   計 (198,500) (206,518) (▲8,018)
189,499 193,338 ▲3,839
( )上段は平成16年度当初予算、下段は平成17年度当初予算案いずれも税込みです。


・8会計の内3会計が赤字予算。特に港湾事業会計は今回黒字予算になっているもののこれは土地売却などの臨時収入があるとのことだが、経常的には赤字であり、実際には3475億円の企業債を抱え、ポーアイや神港突堤など空きバースや背後地などの売却処分ができなければ大変なことになる。新規バースができるたびに、古いバースが空いていくという仕組みそのものを見直すことが必要だ。しかし、この反省もなくスーパー中枢港湾に大阪港と共に指定されたということで、ポーアイ2期のPC18東岸を新たなコンテナバースにし、水深16メートルの耐震強化岸壁を造り、六甲アイランドRC7についても水深15メートルへ増進することが、昨年港湾審議会で港湾計画の変更が行われた。この事業は国と神戸市で313億円かけるという新たな大公共事業だ。世界の港湾事情は船社の競争激化の中でコンソーシャムという企業グループ化が進められて、たとえば専用バースを一船社でなくグループで利用するなどコスト削減が計られている。そのため、どこの港でも空きバースがでるなど問題が顕在化している。このときに、また新たな大水深・高規格バースを建設するなど自殺行為だ。港湾関連用地だけでまだまだ売れ残りがあり、公共専用バースの3割以上が空きバースになっている、このことの解決こそ優先するべきだ。

・公共デベロッパーに象徴される神戸の開発行政を支えてきたのは新都市整備事業だ。
 新都市整備事業会計は平成12年度末実績で基金や現金預金で使えるお金は1859億円あったが空港埋立がピークを迎えた平成15年度では1322億円にまで減り、今年度では1100億円程度にまで落ち込んでしまった。
そして、平成17年度末見込の企業債は3677億円になり、このまま店じまいをすれば逆に、2000億円を超える借金を抱えるということになる。したがって、ポーアイ二期や複合産業団地、そして空港関連用地、宅地分譲などが進まなければ2000億円の不良債権の土地を所有するということになるわけだ。平成17年度の土地売却収益見込は250億円(前年度147億円)で前年度よりは改善されているが、平成元年度には土地売却収益の実績が890億円あったことを考えると640億円を越える減収となっている。平成15年度は17億円そして平成16年度決算では24億円、平成17年度予算では純利益は5億円にまで落ち込んでいる。民間への土地売却はポーアイ2期に限らず、好調だった西神での宅地分譲も進んでいないことが大きな原因になっている。

新都市整備事業会計で使える現金と預金(単位:億円)
基金での現金 現金・預金 合計
平成11年度 874 705 1579
平成12年度 933 926 1859
平成13年度 892 769 1661
平成14年度 878 582 1460
平成15年度 853 469 1322

ポーアイ2期借換えの金額(単位:億円)
平成13年度 平成14年度 平成15年度 平成16年度(予定) 平成17年度(予定)
108 132 128 154 117
(平成13年から平成17年まで合計639億円が借換えに)

ポーアイ2期での土地処分が進まず、起債の償還ができず平成13年度には108億円、平成14年度には132億、平成15年度では128億円そして平成16年度予算(予)では154億円、平成17年度(予)で5年間で639億円を借換えする財政措置をとらざるをえなくなっている。また、流動資産から流動負債を引いた資金残高も平成10年度に875億円あったものが平成17年度予算では190億円とこの8年間で685億円も減少している。平成17年度予算では、基金が1271億円ありながらも企業債の未償還残高が3677億円もあり、既にポーアイ2期の償還が始まっているが、土地が売れない中、借換えで償還を先送りせざるおえない状況が続いている。これに、空港事業にかかるポートアイランド沖事業での起債2014億円の償還が始まれば、年間の償還額が多額になることが予想される。長期金利の上昇が予想される市況情勢の中でいつまでも借換債では対応できないことは明らかだ。これまでのように土地処分が進まなければ、神戸市が一番期待を寄せるこの新都市整備事業が、神戸市を倒産に追い込む大きな爆弾となりかねない。

・高速鉄道事業は平成17年度末市債残高は2358億円となり、海岸線は開業して今年で4年目を迎えるが1日の乗降客が40000人と予想し、当初見込み80000人(計画段階は130000人)からほど遠く、収支も今年度81億円(前年度88億円)の赤字を見込んでいる。平成18年度に海岸線のランニング収支の赤字を全線で解消するとしているが、支払い利息なども含めたトータルでの純損益を黒字にする経営計画は今で明らかにされていない。また、当年度未処理欠損金は1120億円で平成16年度1062億円で15年度1008億円で、毎年50億円余も膨らんでいる。2月24日に明らかにされた神戸市の包括外部監査報告では「正確な需要予測と手堅い収支計画を軽視して、希望的観測に基づく過大な需要予測を前提とした非常に甘い計画」と指摘。そして、震災後、「勇気ある撤退を表明すべきでだった」とまで酷評している。この言葉を真摯に受け止める必要がある。

・自動車事業会計は4年続きの赤字予算。そして今年度は13億円の赤字予算。地下鉄海岸線の開業に絡んでバス路線の全面見直しを行なったが財政的な効果は見られなかったということだ。一般会計からの繰出し基準の見直しで一般会計からの補助金が更に減らされ、新たな経営計画「レボリューション」が発表され、平成18年度の単年度収支均衡を計るということで、4営業所(魚崎、松原が平成17年に)(落合、西神が平成18年に)が民間に管理委託され、西神の5路線が神姫バスに路線委譲されることになった。結果、平成17年、平成18年で合計542人が削減されることに。しかし、平成17年の累積資金不足は338億円になり、削減計画だけでなく、新たな路線の開拓やワンコインバスやコミュニテイバスの検討など経営上の検討だけでなく、市民住民の目線に立った検討が必要だ。

・病院事業会計は昨年に引き続き約6億円の赤字予算。一昨年の繰出し基準の見直しで病院職員の退職金負担が一般会計補助からはずされたことが原因。病院事業会計は今後中央市民病院のリニューアル問題が大きな課題に。医療産業都市構想を支えるために中央市民病院が先端医療センターと隣接するポーアイ2期への移転のための基本構想がだされ、今年度は基本設計に着手。中央市民病院は、現在でも建設時の残債を100億円残し、累積欠損金は平成17年度末で339億円にのぼっている。この移転新築は土地代抜きで400億円の建設費が必要に。また、病床数が912床から600床程度になることにも市民から利用しにくい病院になるのではないかとの危惧の声も広がっている。そして、建設と運営資金を節約するためにPFI方式や独立法人化などが検討されているようだが、無から有は生れないことを肝に銘じるべきだ。市民の健康を守ることに全力をあげるべきの市民病院が産業政策優先の病院に変更されるのでは危惧が広がっている。

・水道事業会計は黒字に。去年水道事業が肩代わりした琵琶湖再開発事業などへの阪神水道企業団への負担金(15億円)を、元通り一般会計が負担することになり、一転黒字に。

・下水道事業会計は7億円の黒字に。昨年度、一般会計からの繰出し基準の見直しで一般会計から補助が55億円の削減されたが、みなし償却の適用の拡大や雨水処理経費の見直し、企業債の一括償還などの工夫がなされた。ただみなし償却には問題もある。この手法によれば、減価償却費が減少するため収支は好転するが、資金的には補助金等相当額が会計内に蓄積されないため、改築・更新時に再度の財源措置が必要になるということだ。当局は国の動向が改築・更新などに国の補助が廃止されることは当面ないだろうとの判断でみなし償却を行ったということだが、国の補助金削減の方向が今後も続くことからこれも不透明といわざるを得ない。当面は市民の負担増は回避するとの答弁がなされているが、更新が集中する時期での資金不足が心配される。


6、特別会計

・市街地再開発事業についても、平成12年度で市債残高が582億円であったものが、平成16年度末には1121億円に膨れ上がり、更に平成17年度末には1236億円にもなる。新長田駅前での復興再開発が本格化している。再開発は保留床を売却することによって事業費を生み出す手法であり、土地が上がるということが前提になった手法である。したがって、バブルが崩壊して土地神話が崩れている今の状況の中で、保留床が高く売れて事業費が還てくることになるのか多いに疑問といわなければならない。

売れ残ることが予想されるものが賃貸に移行する現状にあり、事業費が還えってくることはますます難しくなってきている。新長田再開発事業については、これからの事業については当初計画の見直しが行われているが、まだ全体の財政計画が明らかになっておらず、長田での利害住民だけでなく、市民的な合意のためにも早急に財政計画を明らかにすることが求められている。海のポーアイ2期と陸の市街地再開発事業はある意味で同じ現実に直面している。同じように1000億円を超える借金を抱え、売れない土地と保有床を大量に抱え、賃貸への変更など、まさに海と陸の双子関係にある。


・海岸環境整備事業会計での、アジュール舞子事業については元利償還総額が194億円で、償還済み額が101億円で、その内一般財源が平成10年から17年までに、既に79億円が投入されている。こん後も2006年度まで、一般会計から9億円の投入されることから88億円の一般財源が最終的に投入される予定だ。今年度も、16億円が償還財源として計上されている。特に、今回の償還財源については、一般財源でなく、建設局の基金を取り崩して負担するということで、返却への担保を確保したと言うことらしい。

本来この事業は、土地造成して、これを売却して、事業費を賄うと言うことで、一般財源は基本的に使わないということだった。このままいけば、一般財源で海に公園を造っただけの事業になりかねない状況がでてきているということだ。そうであるならば、当初の財政計画を変更して、市民に一般会計からの負担を求めざるを得なくなったことを明らかにして、財政計画の変更を市民に明らかにするべきだ。そして、使った一般財源についてはできる限り変換するような担保が必要になっている。したがって、今回の基金の活用は一歩前進といえる。このように、バブル時代にはじめた第3セクター事業やCCZ事業がことごとく失敗に終わり、そのツケに多額の資金(市民の税金)が使われている。これと同じようなことが新都市整備事業で始まれば神戸市財政は大変なことになりかねない。。



7、今年度予算の主要施策の問題点について

@展望なき海上アクセスの再開

 平成14年に廃止した関空アクセス「K-JET」を平成18年度に再開し、海上アクセスが事業を民間委託するための損失補償として10億円が今年度予算として計上された。そもそも、第3セクターである航路運営の「海上アクセス」とターミナル管理の「神戸航空交通ターミナル」の累積損失は172億円で、神戸市は両社に毎年の経営赤字分を10億円づづ融資を続け、その額は累積で110億円にもなっている。2つの3セクは、資産、人員の整理後も存続させ、神戸空港開港後の2006年には再開し、神戸市貸付分については37年をかけて返済するとなっていた。

今回の予算措置はこの約束を守った形にはなっている。しかし、需要予測も行わず過去の実績を年間で割り出した48万人の利用者を前提にするなど計画は極めてずさん。そして、海上アクセスが事業を民間委託し、使用する高速船を委託事業者から15年間かけてかいとるというもので、海上アクセスの経営が悪化した場合は15年間買取の肩代わりをするための損失補償10億円を準備するとしている。計画に無理があることを前提に民間委託業者に損失補償まで約束するという異例な内容だ。しかも、神戸開港には間に合わず1年後の再開となるということ。まさに、展望なき海上アクセスの再開だ


Aフルーツフラワーパークのツケを農業公園の売却で

 年間1億5000万円の赤字を計上する農業公園の運営を見直し、入園料と駐車場を無料化することが明らかになった。しかも、ホテルの運営を民間に委託し、26haの土地の民間利用も検討するという。しかし、その本当の理由は、平成14年度予算でフルーツフラワーパークの施設買取費として79億円が計上され、この内60億円は公債基金からの借入れ運用(借金)となった。そして、この60億円の一括返済は平成19年度に行う約束になっており、当初は関連外郭団体との統合によってでた余剰地売却で回収するとしていた。

したがって、この余剰地とは農業公園の土地であり、この土地を売却して60億円の返済に充てるということである。しかし、農業公園は福祉や農業振興などに制限される市街地制限地域であり、その売却先も限定されることになり、19年までにこの60億円が捻出できる可能性は極めて厳しい。


B、ポーアイ2期と複合産業団地で分譲価格を最大5割の値引き

 平成17年から3年間、ポーアイ2期と複合産業団地の分譲価格を最大5割値下げする。
価格は分譲開始から8年間見直しがされておらず、周辺地価に比べ割高になっていた。しかも、この2年間あまり、神戸市関連施設以外ではほとんど売却が実績がなく、起債の償還を借換えせざるをえない状況が続いていた。対象はポーアイの製造工場用地と業務施設用地の48ha、複合産業団地の74ha。割引率を一律3割と設定し、業種や雇用数を考慮して2割の割引を追加する。

しかし、造成地での分譲価格は造成に要した費用を基に算出する原価主義のため、土地を売却すれば赤字につながる可能性もある。期間を3年間に限定しているということだが、一度値下げしたものを元の価格で処分できないことは自明のこと。そうなるならば、今回の値下げが結果としてポーアイ2期や複合産業団地の財政計画に大きな狂いを生じることになるのでないか。



C行政の説明責任が果たされていない空港関連予算に262億円

 イ、建設財源が枯渇

 建設財源である1037億円の土地処分が進まず、2005年度末で新都市整備事業会計から341億円の一時借入れや、当初予定の起債1743億円から1998億円と255億円も増額せざる終えない状況になっている。そして、2005年度予算で土地処分が985億円予定であったものが248億円しか売れる予定はなく、737億円もの誤差が出ている。一方で空港島埋立て工事は当初計画で2780億円であったものが100億円削減され、2680億円になるとの見通しであることが市会で報告されている。2005年度末での埋立て事業費は2398億円となり、今後の事業を進めるには、みなと総局長は今後282億円の財源手当が必要と答弁した。この財源手当てには、起債をこれ以上増やせないということで、新都市整備事業会計からの借り入れや国費、土地処分で対応するとしている。

 しかし、既に、建設財源であった旅客ターミナル用地や貨物ターミナル用地、駐車場用地も売却から一部売却・賃貸そしてとうとう駐車場については無料方針がだされる等、予定収入400億円は宙に浮いている。また、新交通ポートアイランド線が8両編成になる時期は明示されず、16年度の処分対象で、建設財源になっている鉄道車庫用地210億円も、このままでは当面入る予定はない。また、ヘリポート予定地についても12.8ha、346億円の土地処分が予定されているが、現状のヘリポートを移設したとしても3haにしかならず、残りの10haを一体どうするのかについても、大きな疑問だ。今、私が書いたこれらの事業は、いずれも民間に対する土地処分でなく、国や神戸市の直接間接に関与した部分の土地処分だ。当初これらだけは、「最低でも土地処分ができる」と神戸市が思っていた部分がこんな惨状だから、民間への土地処分は期待できるはずもない。ポーアイ2期での土地分譲価格が5割も割引されるなどの状況で、1u27万円の分譲価格はあまりにも高い。
しかし、この価格を変えれば、財政計画全体を変更しなければならないことに。


 
ロ、スカイマークへの過度の依存は問題

 スカイマークエアラインズが東京便を7〜8便確保し、ANA やJALも就航を表明して3社で20往復便以上が確保されたと報道されている。しかし、いずれもジャンボ機でなく150人程度の小型機との報道もなされていて、重要予測値にはまだまだ程遠い状況である。

特に、スカイマークエアラインズは東京以外にも就航させたい意向であり、またヤフーBBが撤退した後の神戸球場の命名権を取得するなど神戸の結びつきを強化してきている。特に最近の情報に寄れば、神戸空港のチケットカウンターの一等席を大手のANAやJALでなく全国の空港では初めてスカイマークエアラインズが確保したということである。神戸空港がいつの間にかスカイマークエアラインズ空港になったようだ。このスカイマークエアラインズは発展途上の空港会社であり、北海道から羽田の乗り入れ問題でADOの発着枠は実質ANAの発着枠と同じとの立場で、その見直しを求めて国土交通省を裁判に訴えるなど、ANAや国土交通省との確執ももれ聞こえる。就航便の確保を優先するが故にスカイマークエアラインズに過度の依存は問題だ。


 ハ、でたらめな需要予測

 需要予測の結果に市民からの反発が広がっている。便数も含めたロジットモデルでの予測を行なったということだった。しかし、ロジットモデルのパラメータ値は所用時間や時間価値が異常に低くなるように設定され、しかも需要予測範囲が関西全域に拡張されたことからなんと2015年の神戸空港の需要予測は706万人にもなった。神戸からの需要は87万人にたして、大阪府北部は287万人、そして京都府からは神戸よりも多い110万人も需要があるというのだ。

しかし、神戸空港の発着枠は1日60回の制限があることからオーバーフロー旅客272万人を差引き、最終的な2015年度の需要予測は434万人となるというのが最終結果だ。ところが、この需要434万人でも東京便を例に取るならば、神戸市からの乗客は16.5%に比して大阪府北部から乗客は62.4%にもなるというのである。伊丹空港があるのに豊中や高槻、箕面から神戸空港に東京へ行くために、神戸市よりもたくさんの人がくるなどありえないことだ。神戸空港需要予測の再見直しが求められる。


 ニ、開港1年前、説明責任を果たせ

 矢田市長は2006年2月16日に神戸空港を開港すると発表。しかし、新聞の調査でも5割を超える市民が今だ、神戸空港には反対しているとの結果が報道されている。神戸空港には着工前から、近畿圏3空港のあり方、需要予測、財政計画、環境問題、海上交通への影響、空域管制など多岐にわたる未解決課題が指摘され、開港1年前の現在でもこれら問題は解決をしていない。特に、平成10年の住民投票条例の議会での否決は、この事業の責任制を不明確にした。矢田市長は自らの責任においてすべての未解決課題について市民に対して説明責任を果たすべきだ。

Dポーアイ2期への移転ありきの
     中央市民病院基本計画・設計に着手


 先端医療センターと中央市民病院を隣接させようと平成14年からら移転の話がでてきた。そして、一年間かけて懇話会が開かれ、一昨年3月に懇話会報告がだされ、この懇話会で新社会党の代表や市民代表は、「現状の市民病院は将来の拡張を前提に設計されており、改修で現状の医療ニーズに十分答えうる。したがって移転の根拠が不明確だ」「住民の利便性からも現地改修が望ましい」「神戸市の財政事情が大変な時に600億円もの移転建設費用をだすことは市民感情からも認められない。しかも、起債の未償還がまだ100億円もある。財政上移転は無理」などの主張を行った。また、神戸医師会も「現地で改修するべき」と私たちと同じ主張だった。そして、最終的に懇話会は移転と現地改修、そして外来を現在地に残すとの3案併記の答申をだした。ところが、昨年2月突如「移転方針報道」、そして矢田市長の3月3日の本会議での「私としては先端医療センターと隣接するポーアイ2期が望ましい」との発言が飛び出し、この間の懇話会の議論がどうなったのか。

そして、神戸市は7月にポーアイ2期の先端医療センター隣接地への移転を前提にした構想案を明らかにした。
 私は、これまで「移転ありき」で市民の利便性や患者の声を後回しにするような議論の仕方そのものに、反対の意見を述べてきた。構想案は「名実ともに市民から遠ざかる」移転構想だと言わざるをえない。新計画ではベット数が900床から600床と300床も減ることになる。また、先端医療センターの臨床の役割も果たすということだから、その部分のベット数も減らされることになる。今でも、入院の待機患者が多く、入院してもすぐに退院させられるなど不満が出ているが、ベット数の減少で今以上に待機の患者が多くなり、在院日数も減らされることは確実だ。

 また、建設費も現地改修の試算238億円ですから、400億円の建設費は神戸市の財政の現状を見れば大変な負担だ。また、現在の市民病院の建設のために借りたお金がまだ100億円も残ってるし、用地代も含めれば、500億円近くの資金が必要。財政難で、職員給与も削減する現状で一体この資金はどこから用意するのか。
 そもそも、現在の市民病院は将来も改修して長く使えるようにと、当時の宮崎市長が、わざわざ空き階をつくり、改修時にはその階を利用しながら改修できるようにあらかじめ設計されている。そうであるのに、なぜ移転新築なのか。それは、医療産業都市構想と深く結びついている。医療産業都市の中心をなす先端医療センターでは臨床部分が弱いこと、また資金的な手当ても難しいことから、中央市民病院と一体化することでこの問題を解決しようということだ。成功するかどうかわからない産業化のために市民の健康と安心、そして利便性が後回しにされていいのか、自治体病院としての責務が問われている。



E医療産業都市構想に既に755億円が投資
    更に今後20年間、毎年12億円総額240億円も投入


 
医療産業都市構想の推進に今年度23億円の予算がついた。医療産業都市構想は、臨床病床を持つ先端医療センターが平成15年度から本格稼動した。理化学研究所が運営する発生・再生科学総合研究所も本格的な研究活動が始まり、構想から具体化に移りつつある段階となってきた。しかし、進出企業のほとんどがベンチャー企業であったり、医療産業ではあるけれどもビルの一室を借り受けているだけの状態で、与党議員からも、研究活動先行で産業化への目途が立っていないのではないかとの疑問の声もあがっている。そして、医療産業都市構想が市内中小企業の振興に大きな役割を果すことが期待されているが、医療器械・器具ではあまり目立った開発成果は見られず、先端医療センターに納入したものがほとんで、事業化できる目途は全く立っていない。医療産業都市を国から支えてもらうための医療特区も混合診療や外国医師の参入問題など規制緩和になるのでないかと神戸市医師会が反対しており多くの問題を残している。

 医療産業都市構想には、現在、国費も含め、ハード、ソフトを合わせて総額 755億円のお金が投入されている。その内訳は施設建設などのハード面では神戸市、国で323億円。基金などで67億円。それに国の公的研究費が365億円。その合計が755億円と言うことだ。そして、この323億円のハード整備で神戸市が直接建設整備したのが148億円で、国が直接建設整備したのが154億円、それに民間の都市振興株式会社が建設整備したものが21億円になる。また、67億円は基金等に出捐した45億円、この中には財団の出資金も入り、国の方から22億円、これはプラットホームでこの推進のために毎年補助をしている経費だ。そして、国の公的研究費の 365億円の内訳は、先端医療振興財団に来たものが80億円、直接理研の方に行ったお金が 285億円。この中で市民の税金である一般財源は、将来の起債償還分も含めて、ハードの整備の中に71億円が入っており、ソフト面の基金等で48億円が今までに出ている。これを合わせて 119億円が一般財源として既に神戸市
が投資しているということになる。

当局は設備投資はほぼ終わっていると説明しているが、先端医療センターの運営費は毎年12億円を一般財源から負担するとしている。しかも、空港新産業特別委員会での答弁では12億円を最低でも20年間は必要ということで、これらを計算するとなんと240億円も一般財源から持ち出すことになる。これには研究者の人件費などが含まれておらず、研究が本格化するときには外国からも研究者を招く必要があり、この人件費も今後膨れていくことは確実だ。先端医療振興財団の単年度収支均衡を目指した中期経営計画をこの3月には明らかにするとしているが、新たな研究資材や医療機械の購入を継続しなければ十分な研究が行えないことから実際には、これら研究がパテントを取って、市に金が還流されるまで、一体いくらの投資をしなければならないのか、当局は明らかにしていない。

医療産業都市での投資額の内訳(単位:億円)
その他 合計
施設整備等 154 148 21 323
研究費など 365 365
基金など 22 45 67
総投資 541 193 21 755
(市負担分のうち一般財源は119億円)

F乳児医療制度は小学校6年生までと
    充実するも老人医療助成は大削減


 県が一昨年の12月に行財政改革の一環として、自己負担のなかった重度心身障害者や母子家庭の医療費を一部負担するほか、高齢者、乳幼児でも負担増とする改革案を発表。しかし、医師会をはじめ多くの市民の反発が広がる中、神戸市議会でも実施の再考を求める全会派一致の意見書が出される中、見直しの当初予定であった昨年10月実施が見送られる状況となっていた。
 
ところが、12月25日兵庫県知事は、前回案に、前年の収入が65万円以下の世帯の自己負担分を低減する低所得者対策を追加。また、重度精神障害者への助成を新たに始めるなどの修正を行って、7月からの実施を発表した。これにより、住民税非課税の65歳ー69歳は1割から2割に負担増。重度心身障害者・児や母子家庭は外来で着き千円まで、入院でつき2千円までの負担が生じることになる。神戸市は乳幼児医療については現行の無料制度を継続し、入院については無料を小学校6年生まで延長して、制度を充実。更に、重度障害者についても現行の無料制度を継続させることになった。しかし、老人医療制度や母子医療については県に同調して大削減となった。ここで浮いた財源で、先ほどの乳幼児医療の充実や教育施策に活用するとしている。しかし、一番医療が必要で医療費が生活の中で大きな位置を占める老人医療については県に同調してしまったことは残念。
 
G「震災の幕引き」はさせない

 震災10年の区切りが強調され、震災関連予算は総額で対前年比24.1%減の422億円。減の内容は復興区画整理など都市計画上の役割が収束を迎えていることが主に。しかし、復興基金が修了して今回神戸市貸付金2933億円が返還されることになった。したがって、高齢者の見守り制度等は復興基金活用の残り(40億)を使って存続されることになったが、大方の復興基金を活用した事業は打ち切りとなる。また、災害復興融資の返済期限の延長も国が認めない中で借入れをした企業は大変な状況におかれることになる。神戸市は借換えなどの斡旋はするとしているが、借換えには信用が必要であり、信用があるような企業はとっくに返済に入っているのである。

 「震災は終わっていない」と被災者連絡会などが中心となって「被災者生活実態調査」が行われたが、震災前と比較した家計状況は「回復不可能」「減少」を合わせて8割を超え、復興住宅の多くの入居者は家賃軽減策打ち切りを心配していることが明らかとなった。調査分析した学者は「行政が生活、仕事、住居の3分野をばらして被災者対策を行った結果、生活再建が難しくなった人が多い」と報告している。神戸市は震災10年で神戸市は元気に復興し、後は空港の開港を待って、多くの人に訪れてもらう観光都市をぶち上げている。しかし、今だ生活再建できない多くの市民をを目の前にするとき、復興の前に元の生活に戻す復旧すらできていないことを肝に銘じるべきだ。震災10年で震災の幕引きはさせない。