議会あれこれ
2008年度第3回定例市会
決算市議会分科会
行財政局 企画調整局 危機管理室 教育委員会 市民参画室 総括質疑
議案反対討論
行財政局
1、委託契約や指定管理者制度における労働単価の確保について
働き続けても年収200万円を越えない雇用者が1000万人越え、その多くが若者であることから若者の貧困が社会問題になってきている。
また、自治体自らが調達する事業で、ワーキングプアを生み出してはいけないとの視点に立ち、国分寺市のように公契約における労働基準の確保に取組む自治体もでてきている。 アメリカでは、すでに公契約における労働基準を定めたリビングウェッジ条例を制定する自治体がふえていると聞いている。
工事契約では、労働単価が単価表に反映されているが、実際の工事は下請け孫受けが行っているケースが多く、実際の人件費を把握するには、工事の施行体制、下請けなどを把握し労働環境を報告することの義務付けるなどが必要だ。
また、一方、労働集約型の委託業務では労働単価積算の客観根拠が不十分で、契約額が異常に低くなる傾向になり、結果、低賃金で仕事をせざるを得ない状況が多いと聞く。また、継続的事業では、前年度落札価格に準じて契約額が決まる傾向にあるため、人件費においても客観的な根拠に基づくものではなくなっているのでないか。見解を。
また、指定管理者の再選定が来年度から本格的に始まるが、特にNPO法人などから管理業務にあたる人員を確保することが難しいと聞く。その原因は、選定にあたって人件費の設定が考慮されないことにあるのでないか。他都市では自治体職員の賃金を1つの基礎として人件費の設定が行われている事例があると聞く。神戸市でも、指定管理者の選定基準に生活可能な賃金水準の確保という考え方を導入するべきでないか。
答弁
労働集約型の委託事業には清掃など業務がある。したがって、ダンピング問題もあり、最低価格を今年度から導入させていただいた。また、契約に当たっては、労働法の遵守と最賃を守ることを指導している。
また、指定管理者制度では、選定で事業内容はもちろん管理体制についても、審査している。また、他都市の事例も、見込んでいるというのでなく事例としているとのこと。
質疑
ここに市役所本庁舎、中央市民病院の清掃業務の契約金額の資料がある。平成10年市役所本庁者の清掃業務の契約が8232万円、平成18年には2988万円まで落ち込み平成20年度では3927万円となっている。また、中央市民病院では平成7年1億5637万円だったものが平成20年には8169万円で、いずれも仕様は同じで契約が半額以下になっている。
清掃業務は、典型的な労働集約型であり、人件費が異常に切り下げられているとしか考えられない。こんれが自治体が生み出すワーキングプアといわれるのでないか。
また、指定管理でも、「人件費を求めると選考のマイナス評価」になるのではと心配する声も聞く。指定管理の考え方は、経費の削減だけではないはずだ。
答弁
現在の契約金額が維持されているところを見ると最低価格の設定の効果がでているのでないか。指定管理制度では、当然管理体制についても選定の対象にしている。
質疑
最低価格が設定されている前の平成13年頃から、仕様が同じなのに、本庁舎や市民病院で半額になっている。すでに、人件費が切り詰められた結果の額が、最低価格になっているのでないか。
答弁
最低価格と法遵守で対応したい。
企画調整局
1、医療産業都市構想における費用対効果の検証について
神戸健康科学振興ビジョンで、経済効果が公表されたが、その基礎資料として医療関連企業38社をもとに算出しているが、当時の75社のうちでの38社で、そのほとんどが、事務所のテナントだ。進出企業は増えているが、現状はあまり変わっていない。固定資産税の算出も外郭団体の設置する施設が算出の根拠で、これらを推計の基本にしている。これを基本に経済効果や将来見通しを算出するのは無理があると過去に質疑させていただいた。また、原単位の取り方でも、10年間で該当業種の全国平均値としており、実祭は大企業のサテライトやベンチャー企業などもある。それを、業種で成功した全国平均値を入れ込むのは無理があるのでないか。このように、私は推計の前提に問題があると考えているが見解を。
また、ビジョンでは、現在および将来の経済効果について示されたが、産業化を目指したメディカルイノベーションシステムの提案には、LLPなど新たな機能が必要と提起されており、その実現のために必要な費用は算出されていない。基本は民間資金とのことだが、本当に民間資金の提供が見込めるのか。現在でも市は研究開発基金の造成には毎年15億円程度の負担を行っているが、このような市の負担も含めて、平成20年度予算ベースで228億円、推計の最終年度である平成27年度ではどれぐらいの負担になるのか。見解を。
答弁
第3者の専門家の意見も聞いて検証した上での、経済効果指標だ。専門家からは、該当業種の全国平均値より上を行くのでないかと言われた企業もあったが、あえて平均値にしている。費用については、今後の推移で必要になるかもしれず、今のところ示せない。
再質疑
大きな事業だから費用対効果を明らかにすることが必要だ。効果だけを明らかにして、費用の計画を明らかにしないのは問題だ。ベンチャー企業は、企業として成り立ってゆくことが大変だ。すべてが成功するとの前提の議論だ。また、メーカーのサテライトは業種平均などありえない。指標の前提に問題がある。見解を。
国際金融危機がたいへんな事態になる中で、民間での投資がうまくいくのか。疑問だ。、今までの投資を活かすと言うことが理由で。なし崩し的に公的資金の投入と言うことにならないのか。
答弁
国際金融危機で経済見通しは厳しくなることが確かに予想される、先端医療センターや理研での研究成果が評価されて、中味を充実させることで、民間資金を集めたいと思っている。
意見
10年を迎える中間地点で、実際値は難しいといったことだが、アンケートを再度行うなど積み上げ方式での現況把握を行うべきでないか。
危機管理室
1、都賀川での事故について
先の本会議代表質疑で、わが党の小林議員が都賀川増水事故に関連して防災体制の遅れについて質疑した。副市長は、防災指令の時刻をもって、対応の遅れがあったとはいえないと答弁された。しかし、私が問題にしているのは、都賀川増水事故の対応だけを問題にしているわけでない。当日は、13時55分に大雨洪水警報が出され、14時40分頃事故が起きた。あの事故の内容を十分に把握すれば、他の河川でも危険性があったはずだ。、 ところが、水防関係部局連絡員待機指令が出され、災害警戒本部が設置されたのは、事故から1時間20分後の16時、防災指令1号が出されたのは事故から2時間40分後で、17時20分だ。他の河川でも危険性があったはずで、あまりに遅い対応ではなかったか。
見解を。
また、本会議の質疑で副市長は、今回の事故で局地的かつ短時間の降雨を予想することが極めて難しいとわかった。今後は、危機管理室で降雨の状況や風向きなどの気象条件を勘案しながら、警報がでる前から対応など考えるなど、必要であれば、防災マニュアルの見直しも考えたいということであった。今後具体的に、どういう方向、内容で検討・見直しをしていくのか。
(答弁)
都賀川事故について、地元消防局を緊密な連絡をとり、十分な対応を行った。防災指令の遅れがあったとは考えていない。
ただ、局地的かつ短時間での集中豪雨については、今のマニュアルでは対応できない部分もあり、すでに、危機管理室で降雨の状況や風向きなどの気象条件を勘案しながら、場合によっては警報がでる前から、警戒を各局・各区で強めるよう周知している。マニュアルについても見直しを検討する。
(再質問)
私が、問題にしているのは都賀川事故の直接の対応でない。都賀川で起こったのだから、生田川でも石屋川でも、湊川でも起こりうるし、いろんな災害が考えられる。
そのために、危機管理室があり、全市的な立場で防災指令が行われるのでないか。
その立場で、どうだったのか聞いている。
当日は、私は議員団室にいた。金沢の浅野川が30数年ぶりに氾濫したとの報道を昼のニュースで聞き、実は、私は石川県の出身で、浅野川が氾濫したことなどこれまで記憶になく驚いた。すぐに、パソコンで雨雲の動きを見たら、金沢で大雨を降らした、強い雨雲が神戸市に南下してくるのを確認している。急に空が真っ暗になり、警報がだされた。
しかし、いつまで待っても、水防関係部局連絡員待機指令でず。その後、事故のニュース。それでも、なかなかでず。でたのは4時だ。
ところが、本会議でわが会派の質疑のあった26日の朝、8時26分頃大雨洪水警報が出され、水防関係部局連絡員待機指令と災害警戒本部が設置されたのは9時05分だった。警報から39分だ。都賀川増水事故時は2時間5分もかかった。都賀川増水事故と今回の差はなぜこんなに違ったのか。見解を。
(答弁)
確かに、時間差があるが、できる限り早く防災指令をだすべきとのことで、先日はそうした。当日は、情報収集に集中し、事故の対応を行っていた。そういう状況の中十分な対応をしたと考えている。
(質疑)
事故の情報収集や対応に追われて、結果全市対応が遅れたのでないか。地元対応は消防局や区役所であって、本来の危機管理室は、他に災害が広がることを警戒しないといけないのでないか。地域防災計画によれば、連絡員待機指令を出す基準は「気象庁の予報または警報にもとづき、いまだ防災指令1号を発令するに至らないが、今後の連絡を密にする必要があると認められるとき」、防災指令1号を出す基準は「災害が発生するおそれがあるが、発生の時期、災害の規模等の予測が困難なとき」である。この基準は守られたのか。
(答弁)
都賀川での対応を教訓にして、今回の早期での防災指令になった。できる限り、早く防災指令を出そうということだ。
(意見)
都賀川で対応を教訓にしてというなら、対応に問題があったと明確に反省することが必要だ。反省しないで、教訓はない。反省を明確にすることなく、なんとなくマニュアルが見直しされていたでは、教訓は生かされない。
教育委員会
1、格差社会が進行する中での教育と教員の現状について
子どもの貧困が社会問題になっている。就学援助をうけている児童・生徒は平成19年度約24%。長田の中学校生徒では48%、兵庫では小中平均しても40%を超えている。60%を超えている学校もあり、父子家庭と母子家庭が三分の一を超えているところもあると聞く。30台前半から40台にかけてのワーキングプアーの実態が学校でも如実にでてきている。時間と金がなく生活へのゆとりのなさが、しつけどころでない実体を生み出している。
このような中で、教員が教育どころでなくなっている現状がある。ゆとり教育やわかる授業どころか、朝飯を食べてこない子供、それどころか朝起きていこない子供に、毎日家まで起こしにいかなければならない教員。子供の落ち着きのなさで学級崩壊でどうしていいのかわからないベテラン教員。教員の資質だけでは語れない実態があるのでないか。療養、休職している教員は平成18年で130人だ。ここ5年間に急増している。また、教員の途中退職者も平成13年には71人であったものが平成17年には146人と2倍以上に跳ね上がっている。私の大学時代の友人も体が持たないと退職した。
国は再資格制度の導入、教育委員会は教員の資質の向上や評価制度の導入など、教員の資質の向上や管理強化の方向で、この問題を解決しようとしている。
現場の教員の思いや現状と国や教育委員会の方向は逆行しているのでないか。
むしろ、教員の加重負担を解消して本来の教育に集中できるようなことこそ検討されるべきでないのか。見解を
答弁
教員の教育以外の仕事についてできるだけ減らそうと、今年度からプロジェクトチームを作って検討している。また、教員の心のケーアについても、スクールカウンセラーなどで対応している。
質疑
復帰できなくて退職する教員が増えている。取組みの効果がでていないのでは。教育委員会の会議で、子どもの貧困の現状や教員の休職や退職者の増大などについて、課題にして議論したことはあるのか。ここ2年間の会議記録をには皆無。
答弁
教育委員会で話したことはある。
質疑
教育委員会の会議録を見たが、テーマにはなっていない。学テの公開などではいい議論もされている。別の話の中でふれられてで毛では。ちゃんと。一度テーマとして、現場教員なども呼んで話をくべきでないか。
答弁
一度前向きに検討したい。
市民参画室
1、シルバー人材センター事業と偽装請負について
シルバー人材センターは、設立されて、そろそろ30年だ。しかし、時代にそぐわなくなってきているのでないか。設立した当時は、年金をもらっている高齢者の生きがい事業として出発したものが、現在では、年金の支給額の減もあり、会員の生活給を得るための労働の役割が濃くなってきているのでないか。しかし、現行の制度では、労災に加入できないし組合を結成することもできず、労働者としての権利も保障されていない。一方、雇う側も、会員を労働力ととらえ、シルバー人材センターを労働者派遣法に基づく人材派遣会社と間違うような状況がでているのでないか。「人材派遣業者からも神戸市が補助金をだしているシルバーと競争させられるのは、おかしいのでは」「シルバーは最賃の適用外だ。これと競争となれば、最賃さえ維持できない」との声も聞こえる。
高齢者の生きがい事業か、高齢者の働く場の確保事業かはっきりさせるべきだ。見解を
答弁
会員のアンケートでは生きがいと答えている人が7割で、問題はないと考えている。しかし、生活給でのしごとになっている人も年々増えており、国のほうでも見直しの議論が起こっている。
高齢者の法律も変わり、最近では派遣事業も行えるようになってきており、兵庫県でも派遣事業に乗り出しているところも出てきている。
質疑
2004年の地方自治法改正で、自治体はシルバー人材センターと随意契約が可能となった。現在では、保育所内での清掃・洗濯や国保のレセプトの整理などの事業を請け負っている。レセプトの整理は、シルバーの事業所に持ち込んでということで問題がないが、保育所の清掃・洗濯では、保育所内であり、委託仕様書では、作業については、随時、各保育所長の点検を受けるとされ、また、道具についても保育所が所有するものを使っていると聞く。これでは、請負でなく労働者派遣だ。偽装請負と疑われかねないが見解を。
答弁
20時間以内ということで、何人かで仕事をこなしており、請負業務だ。保育所との一体業務であるが、契約書で指揮命令はシルバーにあることを明記している。道具についてはどうなっているのか調べたい。
質疑
保育所業務と一体でありこのような業務を請負にすることに無理がある。これについては、保健福祉局であり、総括質疑に残す。本来は雇用であるものを自治体が生きがい事業にしてはいけないのでないか。
決算特別委員会総括質疑
1.フェニクス事業の財政問題について
委員会の各局審査でも小林議員が質疑したが、大阪湾で特大ゴミ箱をつくたった事業で、このままいけば平成33年で終わり(処分場が満杯に)ということで、延命を計るということだった。しかし、事業の財政スキームは、護岸の工事については港湾管理者がお金を負担するということで、その総額は540億円。国負担が役120億円で、市の負担が起債を含め400億円を超えるもので、ただ、埋立後の土地処分でこの負担を賄うというものだった。
お聞きしたところ、起債の償還はすでに始まっており、償還財源は一般財源だということだ。しかも、将来の売却の目処はなく、この事業スキームは完全に破綻している、このまま一般財源が使われ続けることに問題はないのか。見解は。
(鵜崎副市長)
護岸建設541億円のうち、19年度ですでに536億円は執行済みで、残債は311億円ある。管理型処分場のため、土地利用が厳しくなり、将来的には技術的に土地が利用できるかどうかわからない。法との関係など調整しながら、今後国に働きかけていきたい。
(あわはら・意見)
このままでは公園を540億円かけて作った事業になってしまう。土地売却で賄えないのは自明で、国に負担させるのか、共同事業であるから近畿レベルの負担なのか。早期に方途を見つけるべきだ。
2.保育所のおける清掃業務のシルバー人材センターへの委託について
委員会の質疑で、保育所の清掃・洗濯業務について、生きがい事業での請負の枠を超えており、偽装請負の疑いがあるのでないかと質疑させていただいた。問題はないとの答弁だったが、清掃業務は保育所の本来業務と一体的なものであり、そもそも請負にはなじまないのではないか。
聞くところのよれば、清掃や洗濯の用具も請負であれば持込が原則だけれども、保育所の備え付けのものを使っている。また、指示命令はシルバー人材センターが行うべきものだが、本来業務と一体であれば、結果として保育所長の指示命令をうけざるを得ない。そうなれば、今問題になっている偽装請負ということになる。保育所の清掃業務は本来、生きがい事業の請負でなく雇用として考えるべきものでないか。見解を。
(梶本副市長)
清掃業務は、昭和62年からシルバー人材センターに委託し、現在27カ所で行っている。作業員は仕様書に従って作業しており、保育所は指揮しておらず、問題はないと考える。
(あわはら・再質疑)
請負の指揮命令は、今回の場合シルバーとなる。したがって、保育所長が指揮命令することはできない。しかし、仕様書を見ると、日常作業内容が明示され、その明示されているもの以外の場所や、緊急の軽易な作業については各保育所長の支持によると明示されている。また、道具についても持ち込みでないとすれば、実質派遣労働で偽装請負ということになるのでないか。
(梶本副市長)
偽装請負ではないかとの指摘だが、保育所が例外的に作業員にお願いすることもあるが、
これをもって偽装請負とは言えない。厚生労働省の判断基準にあてはめても偽装請負にはあたらない。清掃用具の使い方については改善する必要があり、改めたい。
(あわはら・意見)
問題はないということだが、シルバーは生きがい事業であり、行政は生きがい事業を作ることに努力すべきであって、本来雇用であったものを安上がりにできるということで、
生きがい事業にすることは問題がある。
議案反対討論
私は新社会党神戸市会議員団を代表して先ほどの委員長報告に対し、決算第 1号、決算第 4号、決算第12号、決算第13号、決算第15号、決算第16号、決算第19号 、決算20号、決算第21号の9件の認定に反対する討論をいたします。
2007年度決算は、約7千万円の黒字でしたが、退職手当債(赤字公債)などの発行などで70億円の財源対策をして、実質は69億円の収支不足(赤字)になっています。今年度予算も含めれば16年間収支不足が続き、その総額は5700億円を超え、1年間の神戸市予算の3分の2ににも上っています。すでに、公債基金からの繰り替え運用や財産処分など臨時的財源対策は枯渇しつつあり、赤字公債である退職手当債に頼らざるを得ず、今年度予算の35億円を含め105億円となり、後世に大きなツケを残しています。
そして、義務的経費が53.4%を占め、経常収支比率も98.0%と高水準で、依然として硬直した財政構造なっています。
一方市債残高は減少し、国の財政健全化法に伴う新しい指標(新算定方式)では、実質公債比率は17.1%にとどまりましたが、旧算定方式では21%と依然として高い比率となっています。
平成20年度までに新公債比率を20%以下にするとの国との約束を果たすために、さまざまな歳出の削減が行われ、達成の目処がたちつつあるものの、空港島造成事業を抱えた新都市整備事業や新長田再開発事業などでは多くの起債が残されており、今後土地の売却や保留床の売却が進まなければ、起債償還財源が枯渇し、一般会計に大きな影響を及ぼす可能性がますます高まっています。
バブル崩壊後も、起債・土地処分・償還との発想を変えずに、神戸空港造成事業や市街地再開発事業を進めてきたころが、このような危うい状況を作り出してしまっています。過去の起債主義に対する明確な反省が必要です。
このような財政上の問題点の指摘の上に立って以下、認定できない理由を述べます。
その第一の認定できない理由は、国の税制改悪による市民の負担増が続くなか、救済策・緩和策が不充分であったためです。
一昨年、国の老年者控除の廃止、公的年金等控除制度の縮減で、年金等の収入が目減りしているのに住民税が大幅に引きあがり、それを計算基礎にしている国保料や介護保険料がそれに倍して値上がり、市営住宅家賃や非課税措置に基づく福祉制度適用者にもその影響が広がりました。神戸市は国保料の値上げの激変緩和措置をとりましたが、その対象者はごくわずかであり、昨年度の定率減税の廃止も相まって、高齢者にとって住民税や国保料などでまたもや負担が増え、昨年の6月には区役所窓口で再び大きな混乱となりました。
新社会党議員団は定率減税での増収分や控除制度の廃止分による市税の増収分などを高齢者負担増対策に充てるよう求めましたが、現在、高齢者から大きな批判の対象になっている後期高齢者医療制度の準備資金で約4億円を使いながら、5000万円という極めて不十分な激変緩和策に終わったことは問題です。
第二の認定できない理由は、高齢者の健康と足を奪う敬老優待乗車制度の見直しの準備を行ったことです。
すでに、10月から新制度による敬老優待乗車制度が始まっていますが、ICカードと磁気カードの区別、また先払いのチャージ方式や市バスでの均衡区と均一区での乗車時でのICカードの扱いの違いなどで高齢者の中にわかりにくいとの憤りの声が上がっています。
また、事前にカード会社への情報提供への同意書の提出を行わなかった対象者は、10月から敬老パス制度を使えず、ICカードができあがるまでは本来運賃を払わざるを得ず、わかりにくい事前文書に対する問題指摘も出されています。
今回のICカードと低所得者対策として出された磁気カードは、読み取り機への挿入方法が異なり、高齢者が集団で外出した折など、容易に低所得者を判別できることから、人権問題との指摘もだされています。
また、70歳以上の高齢者からは、乗るたびに交通費が嵩むことから、「今後は外出を控える」との声を多く聞きます。神戸市の当初予想を超えて、利用者が大きく後退するのではないでしょうか。先日ある対象者から、手紙をいただきました。そこには、高齢者が外出し、歩行することによっていかに健康が維持されるかを、いろんなデーターを上げなら検証し、諸外国の事例なども紹介されていました。
その一例を紹介します。東京都老人総合研究所の新関省二研究部長のまとめた調査によると、一日一回以上外出する人と週に1回以下の外出の人を比べると、歩行障害の発生では週に1回以下の人は4倍、認知症では3.5倍の発生リスクがあると言うのです。今回の制度見直しによって、確実に高齢者の外出は減少します。その結果が、ここ2~3年ででることはないかも知れませんが近い将来は国保事業や介護事業の費用増につながってくることは必死です。
新社会党議員団は、乗る度制度でなく、フリーパス制度をまず継続をさせること、その上に立って、財源手当ての議論を行うべきと主張しました。しかし、矢田市長はこの主張に耳をかさず、当初からの「乗る度、負担ありき」で制度見直しを強行したことは問題です。
第3点目の認定できない理由は厳しい財政状況でありながら、アジュール舞子事業やベイシャトルに多額の市税が投入されることです。
アジュール舞子事業は当初195億円(現在は203億円)の起債事業で、造成した土地の処分ですべて償還し、市民には負担をかけないと言うものでした。ところが、土地売却が進まず、平成9年から償還財源として一般財源が投入され、平成19年度末で81億円もの一般財源がすでに投入されています。
当局は、一般会計で公園用地として買い戻すとの対策の方向を打ち出しています。しかし、現在賃貸されている土地が購入されたとしても、公園整備費の市持ち出し分と起債償還の一般財源を合計すれば110億円の市税が使われたことになります。
すべてを土地売却で賄うとした事業が、結果203億円のうちその半額を超える110億円の市税投入になってしまったことは問題です。それも、土地売却ができてのことで、26億円が入らなければ、136億円の市税投入が行われたことになります。
市民に負担をかけないといった事業の失敗を市税投入で補うことは問題です。
また、海上アクセス(ベイ・シャトル)は、2007年度決算で2億3千万円、今年度は1億9500百万円が、更に船舶購入費の貸付として4億円が支出されています。
そもそも、海上アクセスはすでに166億円の累積赤字を計上しています。休止したものを、国土交通省の肝いりで、強引に再開したものです。46万人を見込んだ需要を大きく割り込み、現在120人の定員で24.5人しか乗っていません。
そもそも、需要予測の調査もせず、休止当時の乗客数をもとに試算をしたと言うのですから話になりません。補助金は赤字が続く限りだし続けるということです。また、付帯事業と本体事業である海運事業の収入の比率を委員会で聞いたところ、5:5ということで、どちらが付帯で本体事業かわからなくなっています。
しかも、付帯事業のほとんどは駐車場管理業であり、別に海上アクセス会社しかできない事業ではありません。市民からに批判をかわすために、何が何でも黒字に見せようと逆に多額の補助金の投入や形を変えた資金融通が行われています。しかも、累積の166億円の負債をどう返済するのかの明確な方針は立っていません。
事業の失敗を市税投入などで補うことは認められません。
第4点目の認定できない理由は神戸空港の当初計画が大きく破綻していることです。
神戸空港は開港しましたが依然として、「必要性」「財政計画」「需要予測」「安全性」「海岸環境」「空域調整」「市民合意」など未解明・未解決の課題が残ったままとなっています。
今年度上半期の旅客数は136万人で前年同期144万人で、昨年より更に落ち込み、319万人の重要予測から大きく落ち込むことは確実です。
4月からスカイマークの羽田便が2往復、羽田ー旭川便に振り変わり、更にパイロットが大量退職したために休便や夏の沖縄便を中止したことが原因といわれています。
今回のスカイマーク問題は単に季節的な問題でなく、新幹線との競合による運賃ダンピング競争が、スカイマークの羽田便の収益性を悪化させ、より収益性の良い羽田ー旭川便にシフトしたことが原因といわれています。
当初から指摘されていたドル箱路線である羽田便が、神戸ー東京の距離間からどうしても新幹線との競合状態になることが、現実の問題となってきたと言うことです。広島以西であれば飛行機有利と言われてきた問題が現出してきたと言うことではないでしょうか。
特にスカイマークはツアー客でなく、ビジネス客を対象にしているだけに、この問題は神戸空港が持つ根本的な問題点を提起しているように思うのです。
更に、来年1月で鹿児島便が廃止され、更に4月以降、仙台便が廃止されることになり、実質離島便を除けば、主要3路線空港になってしまいました。しかも、3空港一体運用に活路を求める市長の姿勢は、上下分離案が解決しない状況で関空の抱える1兆1千億円の有利子負債を一緒に抱える危険性をおかす事にもなりかねません。
また、神戸空港の造成には1982億円もの借金があり、その返済が2009年度に迫っており、造成した土地が売れなければ大変な状況になります。当局は約1770億円の使える現金預金があり、これを活用するとしていますが、2009年から2015年の7年間で、空港島とポーアイ2期の借り換え分をあわせただけで、それをはるかに超える2600億円もの起債の償還をしなければならない計算になります。
市民は今の神戸空港の需要の見込み違いや進まぬ土地処分を冷ややかな目でみています。事業が成功しても失敗しても住民投票さえ実施していれば、責任の所在が明らかになり、このような事態になっても市民が真剣に英知を結集することができたと思うのです。
更に、子どもに犠牲を押し付ける強引な保育所の民間移管や医療産業都市計画を優先し患者が置き去りにされる中央市民病院の移転なども問題指摘しておきます。
以上新社会党神戸市会議員団を代表しての討論といたします