NEON
GENESIS
EVANGELION
SUPPLEMENT EPISODE:0X2
Air Force ASUKA.
主なオリジナルキャラクター
本田カズエ 三尉 B−4E”エルトリウム”号、ペイロードマスター。空自からの出向。
加藤ヤスタネ 三佐 F−2B改パイロット。タックネーム”ファルク”。
大西カズトラ 一尉 F−2B改パイロット。タックネーム”キャット”。
藤浪カエデ 二尉 加藤の後席員。タックネーム”メイプル”。
岬トモヤ 二尉 大西の後席員。タックネーム”クレイ”。
富士田カツヒト 三佐 B−4Eパイロット。ネルフ職員。タックネーム”ゼータ”。
富士田ヨシヒト 工学博士。B−4E開発担当者。富士田カツヒトの実兄。
堀マサル 二尉 B−4E通信オペレータ。
木沢ヤスアキ 二尉 B−4E電子戦オペレータ。
荒木マサナリ 一尉 B−4E副操縦士。
――12:10
第三新東京市。第壱中学校。
校舎内に昼休みを告げるチャイムが鳴り響く。授業は生徒達のざわめきによって強制的に終わりを迎えた。
そそくさと教師が去ると、喧噪は本格的なものとなった。
「さあ、メシや!」
一際大きな声で鈴原トウジが宣言する。別に彼に言われるまでもないことで、誰が取り合うわけでもないのだが、当人も別に気にしているわけでもない。
むっつりとした顔のアスカがそれを横目に席を立つ。手には鞄をしっかり掴んでいる。それを洞木ヒカリが見とがめた。
「あ、アスカ、どうしたの?」
「今日はこれから演習があるのよ」
不機嫌極まりないアスカ。じろりと、早くも弁当を広げている碇シンジに視線を向ける。
「ま、アタシはエースパイロットだから、バカシンジよりも期待されてるってワケ。だから仕方ないのよねえ〜」
相変わらずの挑発めいた言葉。ヒカリも苦笑するしかない。
「お昼も食べる暇無いの?」
「そ、全く、ミサトは人使いが荒いんだから……」
ぼやきながらアスカが教室の出入り口に向かう。と、戸に手を掛けたところで振り返る。
「シンジ!」
「え、なに?」慌てて顔を上げるシンジ。
「今日の夕食はハンバーグステーキにポタージュスープ、クルトンはポテトよ! もしアタシが帰ったときにちゃんと作ってなかったらコロスわよ!」
「あ、うん……」
気圧されて何度も頷くシンジの姿を確認してもアスカの腹立ちは収まらないのか、ぴしゃりと戸を閉めると、足音荒く教室から去っていった。
「なんや、すっかり尻に敷かれとるやんけ?」
「そ、そんなことはないよ!」
シンジがトウジの突っ込みを受けて、真っ赤になって首を振る。
「ま、今更言うまでもないことだとは思うけどさ」トウジの横でケンスケがにやついている。
「なんだよ、ケンスケまで」
むっとした表情になって、シンジは自分の弁当を、何かにせっつかれるかのような勢いで食べ始めた。
「そうだシンジ、今度の土曜に新横須賀に行かないか? UNのヘリ空母が入港するんだ。航空護衛艦『あまぎ』。ちょっとした見物だぜ」
「あー、その」シンジが健輔の誘いに戸惑いの色をみせる。
「なんだ、何か先約か?」
「ええと、アスカが、買い物に付き合えって……」
口ごもるシンジの声は尻すぼみになった。
「なんや、デエトかいな!」
トウジが一際大声を出した。クラス中の生徒が何事かとシンジの方に顔を向ける。
「そんなんじゃないよ……。アスカがうるさいからさあ……」
ぶつぶつと言い訳するシンジの弁を、まともに取り合おうとする者はいなかった。
とりあえずは、平和な時間が教室に流れていた。
――13:00
航空自衛隊厚木基地。
一機のF−2Bが滑走路に着陸してきた。けれんはないが、その代わりに全く危なげないアプローチぶりに、富士田カツヒト一尉は懐かしげに目を細めていた。
「”お公家のファルク”は相変わらずの様子だな……」
富士田は愛機の主車輪脚の傍らでそう呟いた。ほんの一瞬、自在に空を駆ける事の出来る戦闘機乗りに羨望を抱く。かつては彼も空自のイーグルドライバーだった。
(自分は確かに戦闘機の翼を捨てた。だが、それで後悔しちゃあいない。このデカブツの機長席は、他の誰にも任せる事は出来ない。何しろ、兄貴が作った飛行機だからな……)
タクシーウェイを抜け、駐機場のハンガー前まで来たところでF−2Bは停止し、キャノピーをはね上げた。
「わざわざありがとうございました」
女性が後席から腰を上げ、着替えの入ったボストンバッグを抱えてコクピット左脇に掛けられたラダーを降りた。足が地に付いたところで改めてオレンジ色のGスーツ姿の女性――本田カズエ三尉はぺこりと頭を下げる。
肩に掛かる程度の、茶色に染めたショートカットがふわりと揺れた。
「ま、これもこっち演習の過程のうちだからね。アレの機長の”ゼータ”は俺の同期だ。カネで空自からネルフに転んだ軟弱者だが、頭の切れる奴だ。鍛えて貰え」
鷹揚に応えた、タックネーム”ファルク”こと加藤ヤスタネ一尉も、続いて機外に出る。アレ、という言葉を使ったとき、加藤の視線は駐機場の端に向いていた。
「了解です。……慌てましたよ。便乗させて貰う筈の輸送機が急にエンジントラブルですから」
本田が安堵の声を弾ませる。
「元々カラで飛んでくる予定で良かったな。間に合って何よりだ。さ、いそいだほうがいい」
加藤の優しげな目に送られ、本田はもう一度頭を下げてから、駐機場の端を我が物顔で占拠している巨人機へと駆け去っていく。
その全翼機型の巨人機――、B−4E”ブラックフォートレス”は、自衛隊の所属ではなかった。ネルフに指揮権を委ね、エヴァンゲリオン弐号機を輸送する機体だ。本田は本日付けで、航空自衛隊からネルフへと出向していた。
原子力機関を搭載し、成層圏を周回する空の兵器庫艦として設計されたB−4には、幾つかの派生型が存在していた。E型はエヴァ輸送専用機として、最も原型との相違点が多い。その最たる理由は、空中での周回待機を行うB−4が原子力機関を搭載し、成層圏上の冷えた空気を二次冷却剤に用いていたのに対し、地上待機が原則であるE型からは、原子力機関が外されているからである。
B−4は胴体中央に原子力機関を積み、胴体上部に開いたエアインテークから取り込んだ空気を原子力機関の熱によって過熱、胴体後縁の二次元ノズルから噴射して飛行する。一方のE型には胴体中央から後部にかけて大きく切り取られ、そこにエヴァを固定するロックボルトが追加されている。
主機関は胴体よりの翼下に、万年筆のような細長いターボファンジェットエンジンが四基、パイロンに吊られている。全翼機である上に漆黒であるためにステルス機と誤解されがちだが、このエンジン構造からも判るとおり、ステルス性はさほど重視されていない。機体が黒いのは単に機体強度の関係からチタンと炭素繊維をふんだんに用いているからに過ぎない。
本田の眼前に、建築物のような存在感をもって佇むB−4Eのロックボルトには、既にエヴァ弐号機が固定されている。
エヴァ弐号機は将棋の駒を前後に引き延ばしたような、黄色い五角形のパレットに乗せられている。パレットの両肩からはドッキング機構が伸び、エヴァのロックボルトより外側に固定されている。
パレットの後尾にはロケットブースターが装備されている。これによる加速を受けてなおB−4Eは延々三キロ以上滑走した後にこのパレットを切り離し、ようやく空に上がることが出来る。
余りに図体がでかいため、B−4Eは燃料をフルにタンクに収めた状態では重すぎて離陸できない。ロケットブースターを用いて離陸し、空に上がってから空中給油機から受け取ることになる。B−4Eは空中給油機のタンクを一度で空にするほどの量のジェット燃料を飲み干す、とんでもない飲兵衛でもあった。
「遅いぞ、新入り!」
しばしB−4Eの威容にみとれていた本田は、左翼端から降ろされた車輪脇から発せられた大声で我に返った。
「あ、すみません」
小走りで駆け寄った本田を、ネルフ航空隊の制服――ライン(旅客機)のパイロットの制服と対して変わらない――を着込んだ、タックネーム”ゼータ”を持つ富士田が出迎えた。
「本日付けで着任いたしました、本田カズエ三尉であります!」
「うむ、ご苦労」
一瞬だけ真顔になった富士田が、すぐに破顔する。
「ま、そんなに硬くならなくても大丈夫だよ。当機の機長を務める富士田カツヒトだ。階級は一尉。俺のことはファルクから聞いてるな?」
「あ、はい。その……」
勢い込んで返事したものの、言葉に詰まってしまった本田を前に富士田が口元を更に歪める。
「どうせ、”カネに吊られて空自から逃げた卑怯者”とか言ってたろう? 実際そうだしな、気にしちゃいない」
「はあ……」
加藤が言った通りだったので、本田はどうにも応えようがなかった。
「さて、我が愛機にご招待だ。演習開始まで間もなくだからね、ちょっとバタついているが……」
富士田が左翼前縁の影ぎりぎりの位置を機首下へ向かって歩き始める。本田も焦り気味にその後を追う。
馬鹿でかいエンジンと主車輪脚を仰ぎ見つつ、二人は機首下に到着した。そこには旅客機のタラップ車に似た階段を背負った車両が停まっていた。
階段の上部は機首の真下に突き立てられていた。
「何しろこの図体だからね、どこにハッチを付けるのか設計者も頭を抱えたらしい。結局専用のクルマを作る羽目になった」
階段をさっさと登りながら富士田が説明する。
たどりついたのは、三層からなる機内のローワーデッキだった。そこからエレベータでコクピットのあるアッパーデッキまで上がる。
「ようこそ、我がエルトリウム号へ!」
富士田がにやりとする。――”エルトリウム”。エヴァ弐号機輸送用B−4Eの固有コールサインだ。初号機専用機は”オネアミス”というコールサインが与えられているが、いずれにせよ本田はその由来を理解する知識を持ち合わせていなかった。
物珍しげに操縦席を覗き込む本田に、副操縦席の荒木、電子戦コンソールの木沢、通信コンソールの堀がめいめいに本田に声を掛ける。堀は本田と同じく空自からの出向。荒木と木沢は富士田同様に籍をネルフに移している。
操縦席は機体の巨大さに比べると、他の航空機と大差なかった。主副の操縦席の前にはグラスディスプレイが各三面ずつ配され、操縦桿は舵輪式だった。キャノピー自体にHUD(ヘッドアップディスプレイ)の機能が持たされているが、これとて2015年の今となっては取り立てて目新しい機構でもない。
「極端に反応が鈍いから、操縦するときは動きの先を常に読む必要がある」
本田はエヴァの投下を管制するペイロードマスター兼ジャンプマスターとしてここに配されていた。副操縦士の荒木ヒサシ二尉がにんまりとしていた。
「美人のクルーは歓迎だね」
通信オペレータの堀も笑顔で付け加える。
「ええまあ、……ホントはストライク・ラプターのバックシーターが夢なんですけど」
F22E”ストライク・ラプター”は、UN空軍の主力戦闘爆撃機として配備が進められている。原型は旧世紀の設計とはいえ、今でも最強の部類に入る戦闘機だ。
「はっは、そりゃ残念だったな。こっちに回されたんじゃ、そりゃ当分夢のまんまだ。そのうち”スットンバード”のガナーとして乗る羽目になるかも知れんが」
UN直轄軍及び戦略自衛隊、あとネルフも運用するVTOL重戦闘機”ストームバード”は、余りに特異な運用思想から、パイロットの仲間内ではまともな戦闘機扱いされておらず、”スットンバード”とあだなされていた。
さすがに本田もそれを聞いてうんざりした顔になる。
「これくらいで、そうしょげるなよ。もっと滅入るような話がある」
「なんですか?」
「これから弐号機パイロットとの面通しだよ。アスカ嬢は少々、というか、かなりの気難し屋だ。せいぜいご機嫌をとっておくことだな」
コクピットから機尾まで貫く中央通路を通り、尾部側エレベータでメインデッキに降りる。艦船に勤務した経験のない本田は感じなかったが、閉鎖ハッチに区切られ、壁や天井にパイプの走る機内は、飛行機と言うよりはフネそのものだった。
エレベータの直ぐ近くにエヴァのパイロット用の待機室があった。
「通常型ならここは巡航ミサイルの格納庫になってる場所だ。E型は、余ってる空間を片っ端に燃料タンクにしてる」
そう言いながら富士田がハッチ式の扉をノックし、押し開ける。
「ちょっと、何の用?」
いきなり金切り声で出迎えてくれたのは、エヴァ弐号機パイロットの惣流=アスカ=ラングレーだった。ちょうどプラグスーツに着替え終わったところらしい。第壱中学校の制服が開いたままのロッカーの中で揺れていた。
「どうも。ウチの新入りを紹介するよ」
「初めましてアスカちゃん、ジャンプマスターの本田カズエです」
「あ、そ」
まるで興味なさげなアスカの返事に、本田はやや失望する。まあ、子供だから仕方ないかと思い直すが、どうにものっけから躓いたような気がする。
と、待機所内の壁に掛かったモニタが着信を告げるメッセージを表示した。慣れた手つきでアスカがそれを受ける。
「アスカ、準備は良い?」
アスカがモニタの向こうに映るネルフの作戦部長・葛城ミサト三佐に舌を出してみせる。
「はいはい。ただ行って飛び降りるだけでしょ、そんなのシンジにでも任せておけばいいのに」
「演習目的を再確認しておくわ。今回はあくまで、エヴァが第三新東京から離れた場所で展開した後の処理が主目的。行きはB−4Eが使えても、それで帰還出来る訳じゃないから」
「なんでこのエースパイロットたるアタシが、そんな刺身のツマみたいな演習に参加させられなきゃならないのよ。こういう役目こそ、ファーストやシンジの出番でしょ?」
不満たらたらなアスカを前に、ミサトは決して正面から取り合わない。
「もう。文句言わないの。エースだからこそ、期待してるのに。何が起こるか判らない演習で、誰より臨機応変に動けると信じて、アスカを抜擢したのに……」
「ふん、そんな言葉に誰が騙されるもんですか!」
二人のやりとりを見て、本田は思わず首を竦めて、助けをも止めるように富士田の方を振り返った。が、すぐに期待は虚しいものであると悟った。富士田も本田と変わらぬ表情をしていたからだった。
「さてと。本田三尉。そろそろその鬱陶しいGスーツを脱いだらどうだい?」
「あ、そうですね。忘れてました」
富士田に指摘されて初めて、本田は自分が気慣れないGスーツに身を固めていることを思い出した。
「操縦席の後ろに乗員用コンパートメントがあるが、はっきり言って婦女子の使用に耐えうる状況じゃない。ローワーデッキに、特殊部隊用のカーゴベイがある。そこにも更衣室があるから、着替えて私物を放り込んで置くのがいいだろう」
特殊部隊用カーゴベイ、というのは、エヴァの降下地点が万一軍事的な危険地帯であった場合に支援車両等の安全を確保するために、特殊空挺部隊が事前に周辺を掃討するという目的で設けられているものだった。武器庫区画には、常に一会戦こなせる程度の武器弾薬が厳重に管理されている。
「ご配慮、ありがとうございます」
意識した途端にGスーツの重さを感じた本田が、気の抜けた声で謝意を述べた。コンパートメントの惨状を想像してしまったからだ。
――13:15
厚木基地の空気がわずかに固くなった。B−4Eが演習計画に沿って離陸準備を始めたのだ。
「チェック開始。燃料系統」
左翼側・正操縦席の富士田が、この時ばかりは顔付きを引き締めてチェックリストをこなしていく。コンピュータによる自動チェックは勿論なされているが、最終的に人間の判断を下さなければ到底人の命を預かって飛ぶことなど出来ない。
「問題なし」
右翼側の副操縦席に座っている荒木が、富士田の提示した項目をクリアしていく。
「機関系統」
「1番から4番まで正常に作動中。ロケットブースターに異常は認められず」
「飛行制御」
「異常なし。全エレベータ、フラップ、及びスラスターの動作を確認」
「航法管制」
「GPS、受信状況は良好。ジャイロ正常」
「通信管制」
「使用全周波数を明瞭にモニター中」
果てしなく続くようなリストは、全て問題なく消化された。富士田は心持ち顔を綻ばせて管制塔に通信を送る。
「エルトリウム・ワンよりコーンパイプ・コントロール。離陸許可求む」
「こちらコーンパイプ・コントロール。エルトリウム・ワン、離陸を許可します。滑走路支障無し、グッドラック」
「さあて、行こうか。エンジン始動、ロケットブースター点火準備開始」
富士田は四基のターボファンジェット・エンジンを補助動力装置によってスタートさせた。回転数が正常に高まっていくのを確認してから、富士田は慎重にスロットルを押し込んだ。
B−4Eがゆっくりとタクシーウェイを抜けて滑走路の端へと、その巨体を動かしていく。牽引車の手に負えるような大きさではないので、全く自力で動いていた。
B−4Eのようなサイド・バイ・サイド、つまり正副の操縦士が横に並ぶ操縦席配置の場合、左翼側に機長が陣取る。スロットルレバーは機体の正中線上にあり、富士田がスロットルに右手を乗せたのを見て、荒木がその上から左手を重ねる。誤動作を防ぐための処置だった。
富士田が力を込めてスロットルを突いた。のろのろとしか動いていない様に見えるが、少しづつ加速している。
だが、この加速度だけでは離陸に必要な速度に達する前に滑走の端から端まで駆け抜けてしまう。
「ロケットブースター、点火カウントダウン。五、四、三、二、一、ロケットブースター、スタート!」
主翼下に吊られた、ミサイル状のロケットブースターが長々とした炎を吐き出した。グラスディスプレイ上に示された速度計の針が跳ね上がっていく。たちまち事前に設定された限界点速度を超える。これを超えた後ではブレーキを掛けても滑走路をオーバーランしてしまうため、無理にでも離陸しなければならないと定められている。
B−4Eはその後も問題なく速度を増し、滑走路に五百メートル以上の余裕を残して機首を引き起こした。スロットルはレッドゾーンに押し込まれ、アフターバーナーも全開である。壮絶な爆音と、陽炎のような熱気を残し、B−4Eは大空へと駆け上がっていった。
「こりゃ、凄まじいわ」
F−2B改のコクピットに、束帯で身体を固定し掛けていた加藤が大声で独り言を言った。
「え、なんですか? 今ので耳がおかしくなったもんで……!?」
加藤と組むのは今回が初めての、藤浪カエデ二尉がしかめ面でコクピットを見上げていた。B−4Eのエンジン音の残響はまだ鳴り止まない。
「俺達の演習なんて気楽なものだと思っただけさ」
加藤がいつものアルカイックスマイルを見せる。藤浪は要領を得ないまま頷くだけだった。
これから加藤達は、僚機と共に対艦攻撃の演習を行うことになっている。二機のF−2B改は、それぞれSSM−4A対艦ミサイルを四本抱えた、かなりの重装備を施されている。それでも、B−4Eの離陸を目の当たりにした加藤には、自分たちの演習に物足りない物を感じずにはいられなかった。
B−4E一機分の凄みを効かせるには、最低でも一個飛行隊規模の演習でもなけりゃな……。加藤はあまり意味のない比較を頭の中で巡らせていた。
――13:45
待機所で、本田はアスカとカードゲームに興じていた。
本当なら本田には細かな仕事があるにはある。だが、本当に暇そうにしているアスカに掴まって、相手をさせられているのだった。
適度に負けてやれ、というのが富士田のアドバイスだったが、実際問題ゲームをやりこんでいるアスカのほうが断然強かった。
こんなことやってていいんだろうか、と本田が考え込んでいるところに、映像通信システムの呼び出し音がなった。
軍事用の通信に関して映像をやりとりしり主法には未だに賛否両論がある。音声で済む内容をわざわざ映像で送るのは無駄だという意見も根強いが、文字や映像による伝達のほうがより確実なのも事実だった。
厳密な意味での軍事組織でないネルフだけに、映像通信の採用に積極的な様子だった。本田自身は少し違和感を感じながら、呼び出しマークの出たモニタを見ていた。
「アスカちゃん?」応答する気配のないアスカに本田が怪訝そうな声を掛ける。
「あー、出て出て。どうせ演習開始の連絡なんだからさ」
手札と既に場に出たカードを見比べているアスカがモニタには目もくれずに言った。
なんてズボラな。本田はそう思いながらモニタの前に立った。きっとネルフの作戦部長の性格がうつったに違いない。公務ではともかく、私生活はかなりいい加減だという噂は、ネルフ出向が決まったときから風に乗って流れてきていた。
「待機室」
「コクピットだ。間もなく降下ポイントに到着する。本田三尉、パイロットのほう、よろしく頼むよ」
富士田は本田が応答したことに、何の違和感も持っていない様子だった。予期していたらしい。
「はあ……」
本田は生返事をして通話を終えた。
「アスカちゃん、準備を」
「仕方ないわねえ」
勤労意欲を感じさせない声でアスカが席を立つ。
「カズエ、もうちょっとトレーニングを積んで頂戴。暇つぶしにもならないじゃないの。バカシンジでももうちょっと勝率は高いわよ」
またシンジ君の名前が出た。本田は神妙な顔で頷きつつも、心の中で苦笑を禁じ得ない。一体この半時間余りの飛行で、アスカは何回”シンジ”という言葉を口にしただろうか。
本人が気づいていないというのがなんともおかしかった。アスカがその言動にも関わらず人気がある理由が何となく判るような気がした。
B−4Eコクピット。
「よし、訓練開始だ」
富士田が宣言した。ネルフの発令所に通信を送るべく、通信オペレータの堀もコンソールのスイッチに手を伸ばす。
「いえ、訓練は開始されません、機長」
「は?」
富士田は間の抜けた声を出した。副操縦席の荒木が中腰になって、手にしたサブマシンガンの銃口を富士田に向けている。
「どういう事だい、こりゃ?」
富士田がのんびりとした問いを発する。
「ありていにいえば、ハイジャックということでしょう」
荒木の固い表情は、それがいかなる意味においても洒落や冗談ではないことを示していた。
「副操縦士がハイジャックねえ……。どっからそんな物騒なモノを?」
富士田は泰然としたものだった。
「お忘れですか? この機には空挺部隊用の武器弾薬が保管されていることを。……針路は変わらず、このまま南下していただきます」
「おいおい、こいつは原子力機関を降ろしているとはいえ、莫迦みたいに燃料を飲み込んだばかりだ。赤道どころか南極まで行ける」
「ええ、判っていますとも」
そう言った荒木がニヤリとしてみせる。
「何が判っているってんだ!」
堀が怒声を上げて席を蹴った。それを電子戦オペレータの木沢が押しとどめる。
「なに?」
見れば、木沢の手にも荒木の持っているのと同じ種類の銃が握られている。フルオートの場合、毎分六百発以上の四五口径弾を放てるM10SMGだ。サイレンサーが装備されている。
「大人しくしておいて下さい、堀さん」
木沢が懇願するような口調で頼み込む。
「冗談じゃない、誰が――」
堀の叫びは中途で遮られた。荒木が手にしたM10SMGが発砲されたのだ。サイレンサーの働きにより、マズルフラッシュも銃声もほとんどしない。その為に多少威力は減殺されているだろうが、この近距離だ。堀は短いうめき声を上げて、仰向けに通信コンソールに倒れ伏した。頭部から腹部にかけて四発も喰らっていた。
「やりすぎですよ、荒木一尉」
木沢が顔を歪めていた。堀の遺体を見下ろす木沢の視線は沈痛だった。一本気な堀は絶対に仲間に加わるはずがない、としてなんの同調工作も行わなかった。出来れば死体を見たくはなかったが、堀の射殺は最初の計画の想定内の動きでもあった。
「悪い、どうも銃ってのは好かんな。おい、それよりもさっさと後ろの本田三尉と弐号機パイロットのカタを付けてこい」
「了解」
荒木の言葉を受け、木沢が自分のコンソールを蹴って、スライド式のドアを開けて走り去っていった。
「……何が目的なんだ」
二人きりになって、富士田は沈んだ声で訊ね返す。動転こそしないが、堀が撃たれる瞬間を目の当たりにしては意気軒昂ではいられない。
「富士田三佐はカネに転びましたが、私と木沢は主義に転んだ、そういうところでしょう」
「……莫迦な。主義だと? そうか、UF――」
「それ以上の詮索は貴方の寿命を縮めるだけです」
荒木は銃を富士田の喉元につきたてて操縦席から立たせると、そのままコクピットの背後に通じる通路へと連れ出した。
「これでも、コクピット内で発砲すればどうなるかは判っているつもりです」
「ふざけるな、堀に対する行為は何だ!」
「見せしめです、貴方ではなく、ネルフや自衛隊に対する」
「じゃあ、俺もここでお終いという訳だ」
「一部はその通りです」
「一部?」
富士田の問いに、荒木は行動で答えた。再びM10の引き金を引く。今度は一発、正確に富士田の右手を撃ち抜いていた。
「うがああっ!?」
弾けた右手を押さえて崩れ落ちる富士田。
「ふむ、少しは慣れてきた」
荒木が涼しい顔で言い放つ。富士田は顔から脂汗をしたたらせてうずくまったままだ。
「これであんたはパイロットとしての人生を終えた。ま、近いウチに人生そのものの終わりも近いだろうがね」
丁寧な言葉遣いをかなぐり捨て荒木は、富士田を開け放したコンパートメントに押し込んだ。そのまま彼の腕を、ロッカーのノブに縛り付けた。
「さて、これからが一仕事だな……」
激痛と出血で朦朧とした意識の中、富士田は荒木の独り言を遠くに聞いていた。
B−4Eパイロット用待機室。
「何よ、これ……」
本田が映像通信モニタを前に絶句していた。
演習開始のカウントダウンが無いのを不審に思った本田が通信を入れたところ、血塗られたコクピットの惨状が映し出されたのだ。偶然にもコンソールに崩れた堀の身体が通話のスイッチに触れていたため、通信が繋がったのだ。
「叛乱ってワケ、ふざけるんじゃないわよ」
憤然としたアスカが言い放つ。
「恐らくアスカちゃんが狙いね。裏切ったのは誰かしら……」
つばを飲み込み、喉を鳴らした本田がかすれた声を出す。この段階では、荒木と木沢が裏切り、堀が射殺されて富士田が負傷、という状況が掴めなかった。彼女達の混乱を荒木達が衝ければ、その後の展開も変わっていたかも知れない。もっとも、荒木も木沢も、一分の隙もなく作戦が成功していると考えていたが。
「それと弐号機も。誰も操縦席に残ってないってのが気になるわ。恐らくアタシを直接押さえに来るつもりなんだわ」
アスカの分析は半分当たっていた。
「アスカちゃん、逃げて」
真剣な顔付きで本田がうながすが、アスカはそれを鼻で笑った。
「逃げる? この空の上でどこに」
本田は真面目な顔でアスカを諭す。
「弐号機のエントリープラグ。貴方が乗り込んだところでロックボルトを解除するわ。起動手順を踏まなくてもこの際問題ないわ。エヴァの中なら、このまま投下しても安全に着水できる」
「はっ、冗談! アタシはいやよ、アンタ達を残して逃げるなんて」
「ひよっこ三尉なんて掃いて捨てるほど居る。だけど、エヴァのパイロット――チルドレンは掛け替えのない存在なの。時間がないわ、急いで!」
本田はむずかるアスカの腕を取って、エントリープラグへの搭乗室に向かって待機室を飛び出した。
中央通路を少し進み、右翼側の通路壁面に設けられた後部エレベータにアスカを押し込み、自分も乗り込む。エレベータが一層降りてローワーデッキで扉を開く。
それが開ききる間も惜しく飛び出した本田は、そのまま機尾側の通路の行き止まりにあたるドアをあけ、管制室に入る。渋々ながらもアスカは機尾側にある重いハッチを開ける。その先にはエヴァ弐号機のエントリープラグが突き出している部屋がある。
アスカは右手を見た。そこはロックボルトの管制室で、ラジオスタジオのようにガラス張りになっていた。本田の顔が見えた。インカムを掴んだ本田が叫ぶ。スピーカーを通じて彼女の声が大きく聞こえた。
「早くエントリーを……!」
「いやよ、そんなの!」
アスカはエヴァ弐号機の背中から突き出したエントリープラグを前に、まだ躊躇っていた。
「お願い。……まずいわ、誰か来る。早く!」
管制室に木沢が押し入ってきた。手にサブマシンガンを持っていることで、味方でないと直ぐに判った。それにアスカが一瞬早く気づき、慌てて管制室からは視角になる、ガラス張り部分の下の陰に隠れた。エントリープラグに飛び込むことは、どうしてもできなかった。
銃を突きつけられた本田は後ずさりながら、エントリープラグが挿入される瞬間を待った。木沢が入ってきた時にはもう、エントリープラグ挿入と自動投下のスイッチを叩いた後だったのだ。
「”どうすればいいの”なんて、無駄なことは呟かないわよ、このアタシは……」
壁の陰で、アスカの頭脳が目まぐるしく状況を推理する。ここで逃げ出すのは問題外だった。が、このままでは……。よし。一か八か、やるしかない。
「なに?」管制室で勝利を確信していた木沢が目を剥く。
エントリープラグがするりとエヴァ弐号機に挿入された。床面に開いた穴は、直ぐに四方からせり出したハッチが密閉する。
木沢があっけにとられてその光景を見ていた。やがて、鈍い衝撃と共に弐号機の両肩を固定していたロックボルトが外れる。弐号機がふわりと機体から離れた。
重心位置が変わったために、B−4Eは一瞬機首を下に向けて沈み込み、それから慌てたかのように仰角を取った。
「こいつ……!」
木沢が逆上して本田を殴りつけた。意識が飛びそうな痛み。倒れながらも本田は快心の笑みを浮かべていた。これでアスカちゃんと弐号機を叛乱者の手から逃したのだ。義務を果たした。そう思った。
ジオフロント。ネルフ中央作戦室発令所。
オペレータの緊迫したやりとりを、ミサトは放心した表情で聞き流していた。
投下ポイントである島から大きく外れた海面に叩き付けられる弐号機の姿が、前面スクリーンに映っている。
「待機中の戦自の潜水艦にBGL通信を。直ちにエヴァ弐号機と接触し、パイロットの生存確認を。サルベージ艇の準備も」
とんでもないことになった。それにしてもB−4Eに何が起こったのか。一切の呼びかけに応じずに沈黙を保ったまま南に飛び続ける黒い巨大輸送機。その姿は、ひどく不気味に思われた。
――13:55。
B−4E搭乗室。
「このままじゃ終わらないんだから!」
頃合いを、というより五感の全てを動員して気配を探ってから、ゆっくりとガラス面の向こうを覗き込む。案の定、見上げる管制室に人影はない。
アスカはなおも油断せずに、這い蹲ってハッチまでたどり着く。それを開けて通路に転がり込むと、大きく息をはいてへたりこんだ。
「さあ、反撃開始よ」
荒い息の中、彼女の眼は闘志に燃えていた。
――14:15
戦略自衛隊第六艦隊所属潜水艦『あかつき』。
八丈島の北西三十キロの海中を遊弋していた超伝導推進潜水艦は、ネルフからの特命を受け、直ちに弐号機着水海域へと急行した。
落下時の爆発的な轟音は、バウソナーにはっきりと捉えられていた。それどころか聡い乗員の中には、船体の振動を直接感じ取った者もいた。
艦の頭脳中枢であるアタックセンターで、その一人である艦長が毒づく。
「ネルフのボケめ、一体何を落っことしたってんだ?」
「どうも演習を行っていた様子ですが、例のエヴァンゲリオンとかいうロボットでは?」
先任士官が進言する。
「だろうな。よりにもよって大事なおもちゃを放り出すとはな。だが、発見は出来ても救助は出来んぞ。ネルフの連中は判ってるのか?」
艦長は不機嫌そうだった。
「恐らく考慮済みだと思いますが。何しろ我々への要請は発見と接触であって、救助ではありませんから」
「あとからDSRVでも送り込む腹だろうな」
『あかつき』は、外殻と内殻の間を通る海水を媒体とした電磁推進により、七十五ノットの驚異的な速度で突っ走っていた。同時に、パッシブソナーに加え、ブルーグリーンレーザー(BGL)を用いたレーザーレーダーまで使って、該当海域に沈降する弐号機を探す。
その特徴ある巨体は、すぐに反応があった。
ただちにレーザーが絞り込まれ、3Dモニタ上にワイヤーフレーム化された弐号機の姿が映った。頭を下にする格好で海底にめり込んでいる。引き揚げるのはおおごとだろうと艦長は思った。
「BGL通信回線開け」
「頭を海底に突き刺してますからね、感知できるかどうか……」
副長が疑問を呈するが、『あかつき』から扇状に放たれたBGLは、弐号機の頭部にあるセンサーによって反射光を探知され、弐号機からもBGLが放たれた。
毎秒十メガバイト以上の情報を送受信する能力のあるBGLが、コマ落としの弐号機コクピットの映像を『あかつき』に伝えてくる。
「なんだあ? 居ないぞ……?」
艦長が拍子抜けした声を出す。映し出されているのは、もぬけの殻のシートだけだ。
「脱出しましたかね」
「莫迦いえ。ネルフの話じゃ、コクピットそのものが緊急脱出装置を兼ねているって話だ。それがロボットの身体に残ったままで、パイロットが乗っていない……」
「とにかくネルフに伝えるのが先でしょう」
「そうだな。全く、何をやってるんだか」
行き足を落としつつ弐号機に接近していた『あかつき』は、直ちに浮上に移った。
――14:20
ネルフ中央作戦室発令所。
「コクピットに居ない?」
ミサトが目を剥く。頭を抱えたくなった。
「どういうことかしら……。通信はまだ回復しないのね?」
「はい、こちらの呼びかけに全く応じません」
マコトが振り返って応じる。
「こんなの、演習の範囲外よ……」
既に演習は中止されていた。が、想定外の事態が巻き起こした混乱は、今後に活かせる貴重な経験と言え無くもない。事態を収拾出来れば、の話だが。
「硫黄島の三〇四飛行隊が待機に入ってます。スクランブルを要請しますか?」
シゲルが報告する。第一〇航空団三〇四飛行隊。F15SJ『スーパーイーグル』を擁する部隊だ。
「待って。こっちは状況を掴んでいないのよ。……MAGIの分析は?」
「66.7パーセントの確率で、機内での叛乱と」
「ハードエラーの確率は?」機械の故障、あるいはコンピュータの異常などを指していた。
「ヒューマンエラーに比べれば、まずあり得ません。緊急事態であれば、異常を伝える方法は幾らでもあるわけですし」
マヤに指摘されるまでもなく、ミサトにもその程度のことは判っていた。
「アスカが弐号機で脱出していない。となると機内に残ってるのよ。敵の目的はエヴァの奪取じゃないの?」
混乱していた。弐号機とそのパイロット。一挙両得を狙うなら、輸送機ごとジャックするというアイデアは申し分のないものだ。だが、肝心の弐号機は落下してしまった。
まさかアスカが自発的に残ったなどとは思いもよらないミサトは、判断材料を失っていた。
その時、マコトが声を張り上げた。ミサトは前面スクリーンに視線を返す。
「あ! ”エルトリウム”が針路を変えます!」
同時刻。
B−4E操縦席。
「なんてことだ!」
荒木はすっかり自棄になっていた。エヴァ弐号機とそのパイロットは、ターゲットでもあると同時に貴重な人質でもあったのだ。それをみすみす取り逃がした今、戦闘機が殺到してかれらを叩きのめすだろう。それは時間の問題であるはずだった。
一方。
アスカはローワーデッキを慎重に進んでいた。ハッチに身を隠しながらの行動ではあるが、赤いプラグスーツは目立つ。額に汗が浮かんでいた。
「確か非常用のラッタルがこの辺りに……」
エレベータを使うのは流石に躊躇われた。
「ビンゴ……!」
アスカがにんまりとする。右翼側に、コの字がたをしたラッタルが突き出している。これを用いてメインデッキに上がる。
ビビることはない。敵は、多くても三人だ。そして、向こうはアタシが残っていることを知らない。
きょろきょろと視線をメインデッキの中央通路の前後に走らせつつ、待機室に向かう。
目的は、私物として持ち込んでいる携帯電話だった。それを用いて外部と連絡を付ける。
と、部屋の前にまで来たところでぎょっとなって立ち止まる。中から話し声が聞こえてきたからだ。
「おまえのせいで俺達は死ぬんだ、畜生め!」
声は木沢。怒鳴りつけられているのは本田。
「まずいわね、なんでこんなところに居るのよ……」
アスカは顔をしかめた。が、すぐに気を取り直す。とりあえず敵は戦力を分断しているのだ。各個撃破あるのみ。
木沢を誘い出す方法を考える。アスカがにやりと笑みを浮かべた。
(続く?)
つづきが読みたいなあ、と思った奇特な方は島津にメール下さい、まだつづきが書けてないモノで、なによりの発憤材料になりますので……(^^;)
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