『特別対談』

 愛と幻想の大艦巨砲主義



 対談者略歴(50音順)

金物屋忘八(かなものや・ぼうはち):個人サイトの運営と同時に、 ケンスケ哀乞う会会員、りっちゃん研究所研究員、まルリ委会員、大日本親父翼賛会会長、等々、様々な会に精力的に参加する。「"知性と理性と品性の魂の貴族"を名乗り、でも谷川史子と柊あおいに心奪われている男」(本人談)
 個人サイト”楽描工廠”にて、きわめて詳細な設定で斯界を唸らせる、仮想”戦艦『大和』”を提示している他、”エデンの黄昏”への投稿作品として、「EVANGELION1948」を構想中。
 代表作は「EVANGERION1999」「サイレント・エヴァ」他。

12式臼砲 (じゅうにしききゅうほう):”エデンの黄昏”の投稿者においてわずか4人にのみ与えられている”巨悪”の称号を持つ。国家利己主義メイド愛好者党代表。「愛知県在住の粘液質人間。心はいつでもプロイセン軍人。好きな言葉は「バカモン! 俺のケツを舐めろ! 交信終了!!」(本人談)
 「レッドアスカ・ホワイトレイ」における戦艦『等身大』は、エヴァ仮想戦記を語る上で外せない存在。さらにそれを数段上回る戦艦群が登場する「レッドアスカ幻想編」を現在構想中。
 代表作は「レッドアスカ・ホワイトレイ」「第三新東京のやさしい掟」他。




金物屋「開き直った最初の戦艦という意味で、『等身大』が一番すごい(笑)」
12式「実は戦艦には魅力を感じてません(爆)」

――今回の対談のお題は”愛と幻想の大艦巨砲主義”で。まずは、「戦艦に魅力を感じる理由」からお聞かせ願えれば。

金物屋忘八(以下金物屋) 僕は、まず、力のもっとも端的な象徴だというところですか。あと、ちょっと悲劇的な色彩があるというところとか。

12式臼砲(以下12式) 魅力ですか。実は、感じてません(爆)。じゃお話にならないので。やはり、鉄血精神に働きかける魅力があるのです。はい(謎) 。なお、私の脳髄では戦艦は「大型装甲通商破壊艦」と訳されます(謎) 。

――12式さんには『等身大』あるいは『たかちほ』、なおお姉さんには『相模』、龍牙さんには『やまと』という、それぞれの大艦巨砲を象徴すると思しきフネがいるのですが、金物屋さんの場合はどうなんでしょう? 楽描工廠の『大和』でしょうか?

金物屋 あの「大和」は、みんなあんまり驚かないけど、実は造艦上はものすごいエポックメイキングな艦なんですよね(笑)。僕は、基本的に兵器を「設計」してしまうので、どうしても開き直ったパワーに欠けるところがあっても仕方がないんですよ。そういう意味では、普通の人には面白くないのかもしれない 。
 あの『大和』は、極論するならば、造船官の立場から考えて、計算して設計された、ほとんど唯一の仮想戦艦といってもいいくらい(爆)。
しかたないから、今度、”1948"で、気の狂った砲戦専門の超巨大戦艦を出しますけど(笑)。でも、あくまで技術的に面白い船であっても、12式さんの「等身大」のような、破天荒ななにかがあるわけじゃないですからねえ(笑)。

――超巨大戦艦ですか。楽しみですね。ところで、予定艦名は決定しているのでしょうか?

金物屋 決めていないんですよね(笑)。「壱岐」「隠岐」とか使おうかとも考えたんですが、「樺太」と同じ理由につき(編注・同名の海防艦が存在する)、却下。

――12式さんは、『等身大』の後継となる『月野』級や、『天上』級の話を構想されてますが、それに関しては?

金物屋 でも、単にでかいだけだし(笑) そういう意味では、開き直った最初の戦艦という意味で、「等身大」が一番すごい(笑)

――超戦艦の売りとしては?

金物屋  まったくもって、作者の性格そのままの、くそリアリズムまんまの戦艦という(笑)。水平線の向こうの敵を撃破できないか、という点をいかにクリアするかを考えていますからね(笑)。戦艦の最大の問題として、主砲の砲撃管制があくまで直接照準のみしかできない、という点にあると思うんですよ。
開き直って、主力兵器の座から降りた「戦艦」というものを書き続けるんでもいいんですけどね(笑)

――12式臼砲さんにお伺いしますが、そもそも『等身大』、という名前を付けたいきさつについてお聞かせ願えますか?

12式 これはもう、単純な話で。エヴァにまつわる用語で、巨大さを表現する最も適切な用語が「等身大」だったわけです。ある意味フィギア界におけるドレッドノートでしたから。命名基準に関しては、基本的に綾波帝國海軍のある程度以上の艦はレイが適当に名前を決めています。とはいうものの、艦名はフィギュアが出た順番でもあります。ペーパームーンに感謝(謎)。

金物屋 そういや、『等身大』のスペックって、どんなでしたっけ

12式 RSBCの『播磨』に準ずる(爆)。 56センチ×3門×4基。ガスタービンで35ノット。

金物屋 了解(笑)。でも、僕の超戦艦は、もっと酷いから。というか"卑怯"というべきか(爆)。

12式 ちなみに「月野」級で60cm9門34ノット(爆)1980年就役の「天上」で、66cm12門38ノット(爆)。アスカ帝國のH94『アイリス』(爆)は38−56cm砲9門48ノットです(謎)。

(編注:38−56センチ砲とは、ゲルリッヒ砲とよばれる減口径砲のこと。56cm砲弾が次第に細くなっていく砲身内で圧縮され、高初速で打ち出すという代物(談・12式))

金物屋 48ノットって、何馬力必要か考えたことある?(笑)

12式  あまり考えたくありませんでした。だから、『アイリス』は初の常温核融合炉(林譲治にあらず)搭載艦なのです(爆) 。

金物屋 常温核融合炉ってことは、モーターですよね?一体どれだけの出力とモーターの数がいるんだか(笑) 。基本的に、速力の上昇に比例して、必要出力は、速度の乗数倍で増えていきますからねえ。

12式 問題ないです。アスカ帝國の科学力は世界一です(爆)それに、『アイリス』はレッドアスカ幻想篇に登場する以上完全に冗談兵器ですから。スクリュープロペラじゃなくてウォータージェットを採用しているくらいですし(笑)。

金物屋 うむ。こっちも単に超戦艦ではインパクトが弱い(笑)。命名基準として地方名という案に準拠して(編注:それまでの戦艦が国名であることから、よりその破壊力が高いことの暗示としての意味合いがある)"奥羽""蝦夷"までは決定。九州、四国地方の古語での呼び方を調べているんです。西海道とか南海道とかになるんでしょうか。 関東、近畿は使いたくないのですが(笑)。

12式 H94『アイリス』。設計は某リツコ技術少将(爆)38−56cm半電磁式ゲルリッヒ砲三連装三基。常温核融合炉『スリーマイル』三基搭載。最大速度48ノット。スパコン六基並列接続の敵弾道計算装置『イカサズ・コロッサス』と迎撃レーザーシステムで以下略(謎)。

金物屋  ……聞いているだけで、自分が超戦艦を書く必要性がなくなるのを感じますな(笑) 。




12式「大和はあまりに美しすぎます」
金物屋「一番美しい配置は、主砲塔を前後に二基づつでしょう(笑)」

――ではここで、少し話を変えて、戦艦における美しい砲塔配置について、イメージを伺いたく思います。

12式 アイリスの場合、問答無用で敵に突入して、直接照準で超高速砲弾をぶち込むという格闘戦艦(駆逐戦艦とも言う)なので、全砲塔を前部に集中させています。ちなみに、私にとって最も美しい砲塔配置とはモニター艦……すいません。ビスマルクかシャルンホルストです。

金物屋 三連装砲塔を四基、背負い式に艦の前後に(笑)。前部集中型は、デザイナーの腕によって、ロドネーみたいに無様になる可能性が高いので、僕はあんあり勧められませんねえ(笑)。うちの"大和"なんかそこら辺、デザインはものすごく苦労しましたもの。

12式 つまり、イタリア人に作らせろ、と(謎)。

金物屋 戦艦の主砲を全て右舷か左舷に指向して、それをちょっと下側の斜め前のアングルから写すと、その船の美しさが一番よく現れるのです。で、それで一番美しい配置は、主砲塔を前後に二基づつでしょう(笑)。

12式  二基づつ。つまり。ビスマルク級ですな。

金物屋 モンタナも、良いよ(笑)。でも、前後二基づつというなら長門もそうだし、フッドもそう(笑)。それを言ったら、そこら中にいくらでもあることになる(笑)。まあ、その美しいアングルの理論からいくと、結局大和が一番美しいことになるんですけどね(笑)。

12式 そりゃそうだけど(笑)。つうか、大和はあまりに美しすぎます。優雅な艦橋といい……。

金物屋 三連装砲塔二基の上に、副砲塔が一基ついているところがポイントなんですよね。あれがアクセントになって、ものすごく美しさが引き立っている(核爆) 。

12式 後期の針ねずみの様な対空火器の群れも美しさに凄みを加えてると思います。




金物屋「戦艦が役に立たないと言うのは、結局は使い方でしかない」
12式「アイオワってのは砲撃戦においては防御の脆弱な戦艦という歪んだ存在」

――12式さんが対空火器という話をされましたが、現実問題としては戦艦は航空機にかなわない、大艦巨砲主義というと随分と時代遅れな印象を拭えないのですが、果たして戦艦は無用の長物だったとお考えでしょうか?

金物屋 無用の長物ではないでしょう。使い方ですよ。ただ、海軍の主力兵器ではなくなってしまっているだけで。

12式 ピラミッド程正体不明でもなければ、万里の長城ほど雄大でもありませんな(笑)。本当に無用の長物だったかはアイオワ級を参照ですな。

金物屋 戦艦が役に立たないというのは、ww2で日本海軍が戦艦の使い方を間違えたために広まったデマで、僕は、結局は使い方でしかないと思いますけどね。あれは、元飛行機乗りの海軍士官が吹聴しまくったせいであって。兵器で重要なのは、いかにして敵に短時間で多くの鉄と火薬を叩き込むかであって、今のところ、空母のみが柔軟性と射程の要素で勝っているだけですから 。戦艦の問題は、潜水艦と航空機に対して対抗手段がない、というただそれだけであって、他の要素については今のところ最強の兵器でしょう。

12式 うむ。良く考えたらほぼ陸の人間である私に何が言えるのだ(笑) 。まあ、ドイツ万歳な私にとっちゃ、通商破壊こそ金科玉条であるわけですな(謎) 。

――では、同じ戦艦同士の対決があるとして、よく言われる仮定だと思うのですが、『アイオワ』と『大和』がやりあった場合、どちらが強いと思われますか? 近年では、『アイオワ』有利説が多いですが。

金物屋 まず大和でしょうね(笑)。みんな、アイオワのFCSのことを過大に評価しているけど、基本的にはあれもリレー計算機なわけであって、大和と変わらないわけですよ。

12式 同感ですな。シャーマンとティーゲルの対決のようなもんです。アイオワってのは砲撃戦においては防御の脆弱な戦艦という歪んだ存在でしょう?

金物屋 アイオワのレーダー射撃うんぬんも、夜間か、天気の悪い日に至近距離まで近づければ、であって、でも大和の46cm砲に対してアイオワは多くの弱点をもっていますから、大和に致命打を与える前に大和から致命打を喰らう可能性の方が多いでしょう。みんな忘れてますけど、アイオワって、巡洋戦艦なんですよ(笑)。下手すると、長門の41cm砲弾にだって、クリーンヒットでひどい目に遭う可能性だってあるのに(笑)。あと、アイオワ級の散布界の広さについて、あえてみんな口をつぐんでいますけど、とにかく、挟叉を出してから命中するまでがかかるんですよ。ですから、アイオワが大和に命中弾を出すまでに、大和が命中弾を出す可能性の方が高いのです(笑) 。

12式 しかも、大和の砲術とは海軍最高の砲術なわけだから。遠距離で命中弾を出せる確立も相当高いわけで。黛大佐がアイオワをどう見たのかちょい気になります(謎)。

金物屋 それこそ、夜間どこかの海峡で待ち伏せでもしていない限り、アイオワに勝ち目は薄いと思いますよ。といいますか、3号j型とT34/76を比べているようなもんであって、確かにFCSはアイオワの方が上ですし、主砲も見かけ上はアイオワと大和は同等に見えるでしょう。

12式 3号J型と……ぐふっ(笑)!!

金物屋 だってそうじゃないですか(笑)。3号j型はT34に比べれば、はるかに技術的に高度な戦車ですし、主砲の能力も見かけ上は上なわけです。でも、結局どっちが戦場では優れていたか、ということです 。

12式 事実ですわな。

金物屋 結局、根本的な底力は大和の方が上ですし、乗組員の練度も基本的には同等でしょう。そうなると、どうしたって大和の方が強いとしか言い様がない 。龍牙さんは、アイオワとか言いそうですけど(笑)。確かに、アイオワの方が打たれ強いでしょうからねえ 。結論として、アイオワに対する個人的な評価は、弱い敵にはとことん強いが、強い敵にはとことん弱い、です(核爆)。

12式 つまりジャイアンですな(笑)。




12式「裏技と開き直りとはったりで行こうと考えてます(爆笑)」
金物屋「いかに書き続けるか、が問題」

――では最後に、お二方がそれぞれ構想されている超戦艦が登場する作品について、抱負などをお願いします。

金物屋 あくまで技術的な嘘をつかないことで、状況の大嘘をカバーしたいですな(笑) 。

12式 まっとうな手じゃ私には現実的に超戦艦が云々なんて到底できやしないので(笑)、裏技と開き直りとはったりで行こうと考えてます(爆笑)。 む。見事にスタンスというかベクトルが逆ですな(笑)。私の場合、嘘を嘘で隠すという手段ですからね(爆笑)。

金物屋 後は、いかに書き続けるか、であって(爆)。

12式 それが戦艦の射程よりも、航空攻撃よりも重大な問題ですな(笑)。

――頑張って下さい。期待しております。今日は貴重なお話を訊かせていただき、ありがとうございました。

司会・構成:島津
収録場所: 黄昏井戸端会議室




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