開港せまるも、視界「霧の中」
責任を不明確にした神戸空港賛否住民投票条例の否定 値引きが財政破綻の始まり 着陸収入が予定の半額にー管理収支の見通しも先送り 「空港建設起債の償還に市税投入できる」と答弁ーその後撤回 淡路島南端ルートは約束違反 開港1番機が実機飛行テストにー問われる安全性
2005年12月22日空港請願反対討論
私は請願第110号から請願第121号に至る12請願に対して先ほどの委員長報告に反対して、12の請願を採択する立場で討論いたします。
この12の請願はいずれも空港整備事業会計への市税投入問題や空港島造成事業での起債償還にかかる土地売却問題そして飛行経路に関する淡路島市町への説明責任を求め、安全性や騒音、電波障害調査のための実機飛行テストを要請し、海洋環境汚染など環境アセスのやり直しなどを理由に神戸空港開港の凍結・中止を求めるものです。
責任を不明確にした神戸空港賛否住民投票条例の否定
神戸空港の開港が2月16日に迫ってきているにもかかわらず、未だ凍結・中止を求める請願が多数寄せられ、中止を求める訴訟が行われるなど、神戸空港が市民の市政に対する不信の大きな要因になっています。賛成・反対いずれの結果になろうとも7年前の住民投票がなされていればと残念でなりません。住民が自ら神戸の将来に責任をもとうと賛成反対の結果にとらわれず住民投票を提起したわけですから、神戸空港開港後の結果がどうなろうと住民がその結果に責任持つことができたと思うのです。住民投票直接請求運動は住民自治の発露であり、地方自治の本旨に基づくものであったにも拘わらず、神戸空港反対運動としてしか与党会派や当時の市長に認識されなかったことは、極めて残念であり、運動を進めた私も努力の不足を反省しているところです。市民自治の飛躍のチャンスを逃したことが神戸空港の今後に暗い影を落としています。今回の空港新産業特別委員会の審議でも、必要性、需要予測、財政計画、空域調整、安全性、海洋環境の問題など未解明未解決の課題が開港後に先送りされてしまいました。
値引きが財政破綻の始まり
特に、今回の空港新産業特別委員会では、土地処分など財政計画と空港開港後の管理収支と市税投入問題が大きな焦点となりました。空港島造成事業では神戸市が購入した土地は別として、民間に売却予定が確定した土地は、業務施設用地で、土地の値段を3割値引きした0.3fだけです。開港前にして、旅客・貨物ターミナル、駐車場用地を除いた民間売却予定地82.6haのごくわずかといわねばなりません。局長は委員会で「建設事業費を100億円圧縮したからその枠の中で値引きによる売却を進める」と答弁されました。しかし、3割引で売っても100億円の枠では12haしか売れないのです。局長は「誘致をはかることによって、土地の価値を高めることができる」と、27万円という高値に戻すことができるとの趣旨の答弁をされました。しかし、今回の空港業務施設は駅でいえば駅前の土地であり、本来はもっとも不動産価値の高いところであり、そこを値引きしておいて、空港からもっとも離れている処分緑地が1平米27万円で売れるとはとうてい思えないのです。しかも、空港周辺用地は航空法によって高さが規制されおり、土地の高度利用もできない制限された利用の土地です。局長は新都市整備事業会計で最終的に処理するという立場から空港島とは直接関係のない複合産業団地やポーアイ2期の用地を3割から5割値引きして、50haを3年間で売却したいと答弁されました。
制限された土地利用しかできない、市街地から離れた空港島の土地がポーアイ2期や複合産業団地の3倍もの値段で売れるはずがありません。今回の値引きは、これは100億の枠でとどまるとは考えられず3年後から始まる起債の償還に大きな問題を残すことになるのではないでしょうか。
着陸収入が予定の半額にー管理収支の見通しも先送り
また、空港開港後の管理収支についても、局長は従来から着陸収入は18億円で、支出は10億円、土地使用料、交付税や県の補助金などで十分管理は賄っていけると答弁されてきました。ところが、11月末に、全日空、日本航空、スカイマークが就航する機材が明らかになりました。当初、見込んでいたジャンボ型大型飛行機の就航予定はなく、半数以上が小型機以下でした。結果、開港時の着陸収入は7億8000万円と当初予定から落ち込むことになり、先日行われた決算特別委員会で局長は「各航空会社の機材繰りが明らかになる11月には着陸収入が決まり管理収支について精査したい」との従来答弁を翻し「機材繰りが再見直しされる3月以降に管理収支の精査を見送るという」空港開港後に先送りする約束違反の答弁を行ったのです。今回の空港新産業特別委員会でも、「着陸収入と土地使用料、地方交付税、燃料譲与税、県補助金で、起債償還も含め黒字は確保できる」「予算編成で明らかにしたい」との答弁でした。起債の償還額は当初見込みで299億円にのぼり、30年返済と単純に考えても年間10億円近くになり、20年返済もの30年返済ものがあるということになれば年度によっては10億円をかなり超える年度も考えられ、本当に黒字が確保できるのか極めて疑問といわなければなりません。このような疑問が市民に渦巻く中、開港前での市民説明はとりわけ財政問題で需要だと思うのです。そのすべてが開港後に先送りされたのは極めて問題です。
「空港建設起債の償還に市税投入できる」と答弁ーその後撤回
また、この質疑の中で私が、「『開港後の管理運営を行う空港整備事業会計に市税である償却資産税を投入しても建設費に投入するわけでないから市会決議に違反しない』とのこの間の局長答弁や市長答弁は問題があり、とりわけ空港特会には滑走路やヘプロンなど空港本体を建設した建設費にあたる起債の償還が含まれており、ここに市税が投入されれば建設費である起債の償還財源になり本体工事には市税を入れないという市会決議に結果として違反することになるのでないか」と質問したところ、局長は「市会決議は建設にあたってということで、起債の償還に市税を投入することは市会決議違反でない」旨の答弁を繰り返しました。これは、極めて問題があり、「建設が終わった事業で起債が残って場合、その起債の償還に市税を投入して決議に違反しないという」わけですから、空港島建設での2000億円に近づく巨額の起債の償還にも市税が投入できるという考え方につながってゆきます。このことが一番問題になったのが、住民投票条例案を審議したあの7年前の臨時市議会であり、3140億円という巨額な空港建設費に市税が投入されるのでないかとの市民の疑問に与党会派と市当局が答えたのが「建設にあたっては本体工事等に市税を投入しない」との市会決議だったのです。その決議は、建設時ということでなく建設の財源であった起債の償還にも当然市税を投入しないとということであったはずです。これが破られるとすれば重大な市会決議違反になり、空港整備事業の管理収支にとどまらず、空港島の土地が売れないということになればアジュール舞子事業のように建設時の起債の償還に一般財源がどんどん投入されることになり、市民生活に重大な影響が出てくることになるということです。その後、新聞報道によれば、委員会終了後、局長は報道に対して、これら委員会発言を撤回する旨の会見をされたということですが、本来は議会での発言は議会で修正するべきであります。
淡路島南端ルートは約束違反
また、神戸空港の飛行経路案で新たな淡路島南淡ルートが追加されたことに対しても、神戸市当局は当初からあったルートであり淡路市町は承知しているはずで終わった問題の旨の答弁を繰り返しました。しかし、請願者の淡路の空を守る会が話し合いを求めた南あわじ市長の中田勝久市長は「住民は騒音被害の心配を持っている。南淡VOR-DMEへの集中で環境問題悪化の解決を求めたい」と語ったということです。何も終わった課題でないということです。また、委員会の審査で「関空の空域のシフトを示唆したことが南淡ルートの存在の前提になっている」旨の答弁をされましたが、関空の運用の変更が説明されただけで、神戸空港の飛行経路として南淡ルートがちゃんと説明されていたのか委員会審査では疑問が残されました。したがって、淡路市町連絡協議会の早期解散は極めて問題があり早急な開催と調整が必要ではないでしょうか。
開港1番機が実機飛行テストにー問われる安全性
また、実機飛行テストについても、当局はシュミレーションや伊丹空港での体験騒音チェックを行ったことをあげ、「実機飛行テストはするつもりがない」との答弁を繰り返しました。しかし、1993年9月22日の広報こうべや11月22日の神戸空港ニュースの第1号に明確に実機飛行テストの実施を約束しています。いくつかの婦人会や自治会の一部を伊丹空港に連れて行って騒音体験をさせたということで、実機飛行テストに変えてしまうのは騒音や電波障害を心配する多くの市民を置き去りにする行為で、市民への説明責任を果たしたとはいえないのではないでしょうか。また、実機飛行テストは、騒音や電波障害のチェックだけにあるのではありません。むしろ、空域が輻輳する大阪湾で飛行機が安全に飛行することができるかをチェックすることにその本務があります。コンピューターによる広域一元管制が万全の体制であるように当局は答弁されてきましたが、過密空域における管制業務は究極的には人的作業によらざるを得ず、人的過誤を避け得ない現実を直視するべきです。空域管制は国の専管事項であっても、事業者の責任において十分な検証のためにも実機飛行テストを行うべきです。中部国際でも関空でも十分な時間をかけて実機飛行テストが行われています。時間がかかるということであれば、開港を延期してでも安全性の確保のために実機飛行テストを行うべきです。このまま行けば、2月16日の開港の日の一番機がまさに広域一元管制の実験機になるということです。乗客を乗せてでの実験はすべきではありません。
そのことを申し上げ、請願12件の採択に賛同していただくことをお願いし、新社会党議員団を代表しての開港前の神戸空港に関する最後の討論を終わります。