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2006年度神戸市予算の分析

                  2006.3.3  文責 あわはら富夫                                                                  
1、2006年度当初予算額 5、企業会計収支の現状
2、歳入並びに歳出について 6、特別会計
3、財源対策 7、今年度予算の問題点について
4、市債について
       
1、2006年度当初予算額


      予算額  前年比(前年度の復興基金への出捐・貸付金を除いた額比)
一般会計  7490億円  (−7.8%)   
特別会計 1兆1217億円 (−10.9%) 
合計   1兆8708億円 (−9.7%) 

・今年も全会計で対前年1998億円(対前年比9.7%)減のの減額予算となっている。特に一般会計は政令都市では最高の減額率(対前年比7.8%)で、大阪市が4.4%で続く。他都市に比してより節約型予算だ。

2、歳入並びに歳出について

@、(歳入の特徴)  

・市税収入は、6年連続減が続いたが、昨年度より増加傾向に。今年は、個人市民税が伸びる傾向だが、固定資産税の評価替えで95億円が減となり、平成17年度決算額(2560億円)よりは減額の2540億円の予算となった。
今回は景気の上昇が個人市民税に反映したが、政府の定率減税や控除制度の見直しの景気影響はこれからであり、今後個人消費が落ち込むことが予想され、景気動向は依然として不透明だ。しかし、98年度3000億円に迫っていた市税収入と比べると歯止めがかかったというものの、今年度でも450億円も落ち込んだことになる。

・地方交付税は1010億円で対前年で190億円の減となっている。震災復興事業の終息で地方交付税は大幅減となったが、震災前の平成6年には地方交付税が410億円だったことを考えると、神戸市の財政力が落ちていることを証明している。地方交付税額では政令市で札幌に次いで2番目に多い自治体になっている。地方交付税への過度の依存は、国の地方交付税特会の大幅赤字の中、今後も続く三位一体改革の中で他の自治体に比べて大きな影響を受ける危険性がある。
(単位:億円)
A、(歳出の特徴)

1,目的別内訳
         
・民生費については前年比4.2%の増だが、そのほとんどは生活保護など扶助費の増で、震災後急増している。商工費は利子減に伴い中小企業融資の預託金が減少したため。また教育費の減は科学技術高校の買戻しが完了したため。土木費・住宅費や環境費、衛生費、農政費などはシーリングの実施などでほとんどが横ばいか減少している

2,性質別内訳

・生活保護費と児童福祉費などの扶助費が今年度も昨年に引き続き37億円増え、この3年間で167億円も増えている。
単位:億円  
長引く不況と震災の影響で、生活保護が飛躍的に増加し、補正予算を組むことがあたりまえのような状況になっている。

・借金払いである公債費は1160億円で前年度より306億円減少し、ピークであった平成16年度1647億円から500億円近くも減少している。
(単位:億円)

・投資的経費は昨年度とほぼ横ばいの6億円減で712億円となり、平成5年度で2733億円あったことを思うと2000億円以上も減少している。また、物件費・補助費等の経費は昨年度より更に63億円減少。平成11年度1764億円であったものが平成18年度予算案では1074億円と690億円も削減されている。

 投資的経費といって学校や市営住宅や道路補修など日常的な市民生活につながるものも多く、極端に減らされるということは市民生活に大きな影響がでることを意味する。

 また一方、2700億円を越える過去の投資的経費が、維持管理費を増大させ、また公債費を増やし、現在自由に使える財源を圧迫しているのも事実だ。そして、人件費、扶助費、公債費の義務的経費の構成比が昨年度50.8%で今年度51.8%と財政の硬直化が更にすすんでいる。




3、財源対策

(2006年度予算での財源対策)           55億円
 @公債基金からの借入               30億円
 A財産収入                     15億円
 B行政改革推進債の発行             10億円



・財源対策の基金は12年度で底をついた。公債基金(1600億円)の借入も公債基金借入上限の500億円まで残り約127億円。

・財産収入で今回15億円を計上したが、そもそも処分できる普通財産(公有地)は約160億円(平成13年度)で、15年度85億円、16年度50億円、17年度で25億円、今年度は15億円を予算措置している。決算ベースでの検証は必要だが、今回で底をつく状況だ。行政財産を普通財産に変えて売却することになるが、小学校や高校など統合などで廃校になった土地が、この間民間業者に売却された。本来、地域のコミュニテイなどにとって有効な土地利用ができる学校用地がである。例を挙げるならば、小野柄小学校が洋服の青山に、赤塚山高校の一部が東急不動産。昨年度の御影工業高校跡地の売却はコンペ方式を採用し、購入価格が破格に低い業者に決まり、政治家の介入の黒いうわさもでる始末だ。

・新都市整備事業会計から通常は35億円の支援が続いていたが、ここ5年間で24億円、18億円、12億円、15億円、5億円で、今年度はとうとう打ち切られてしまった。神戸空港の建設で多額の起債を発行し、宅地分譲も進まず、ポーアイ2期での土地処分もうまくいかない中での打ち切り。一般会計の改善は進んでいるものの、今まで神戸市財政を陰に陽に支援し続けてきた新都市整備事業が売れない土地と3600億円に上る市債を抱え、極めて危険な状況になっていることを証明している。

・平成18年度予算編成前の収支不足額は75億。それに、国の三位一体改革などの影響による財政状況の変化で更に17億円が不足に。その対策として、恒久的収支改善策として経常的経費のシーリング37億円、臨時予算のシーリング34億円、人件費の削減で26億円で合わせて97億円の支出を削減した。そして、政策重点枠で60億円を予算化した。それに、財源対策として上記の55億円の歳入増対策が行われ、18年度予算編成前の75億円の収支不足額対策を行ったということだ。経常経費の削減は既に限界に達しており、三位一体の国の財政改革は更に続き、生活保護等の補助率引き下げの動きがあり、神戸市のように生活保護予算の大きいところでは深刻な影響を受ける可能性がある。しかし、これ以上の臨時財源対策には限界があり、極めて難しい状況だ。

・平成5年から臨時財源対策が行われているが、その総額は平成18年度予算までに5615億円にも上るのである。この14年間になんと1年の一般会計予算の約3分の2が臨時対策財源で消えたと言うことである。


4、市債について

@今年度の発行額と公債費

1,(市債)

・一般会計で402億円で前年度501億円から99億円減に。
・特別会計・企業会計については借換債を除くと410億円(前年度706億円)と対前年396億円減の市債を新たに発行。一般会計も含めて812億円の市債発行となっている。市債の新たな発行を抑えようとの方針は一般会計では貫徹されているが、特別会計では震災復興市街地再開発事業や空港島埋立てなどの終息で減少したもの。しかし、平成18年度末残高見込みでの神戸空港関連の港湾事業会計とこの新都市整備事業会計の両事業で7000億円を超えた昨年度よりは好転しているものの、1年間の神戸市の一般会計予算に近づく6791億円を越える借金を依然として抱えている。

2,(公債費)

・一般会計での公債費は1160億円(前年度1466億円)。公債費が減少して市税収入(2540億円)が伸び、市税収入の47%が借金払いに。2年前の60%を超える状況からは好転。しかし、家計でいえば20万円の収入で10万円がローンの返済に回るということだから、健全財政には程遠い状況だ。

・企業会計・特別会計では起債の償還が今年度1587億円(前年度1979億円、一昨年度2050億円)。借換債(今年度735億円、前年度1263億円、一昨年872億円)と一般会計・公債基金からの繰入と合わせると3482億円(前年度3445億円、一昨年度4570億円)も借金返しすることになる。市税収入を922億円も超えた借金返しが行なわれるということだ。今後3年間は、特別会計での起債償還は順調に進むとみられるが、問題は3年後から空港島造成事業での起債償還が始まり、ポーアイ2期での借換え債の償還も含め4年間で1800億円を新都市整備事業会計だけで賄うことになり、ここがこれからの一番の問題点だ。

A、市債の現在高と推移(神戸市都市経営の破綻)

・2006年度末見込で市債残高は2兆6931億円(前年度末見込2兆8054億円)で市債残高は前年度824億円減ることに。赤ちゃんまで入れて150万人で割ると市民一人あたり176万円の借金を抱えることに。



・今年度の一般会計の公債費は1160億円。ところが元金償還見込みは512億円、そして、減債積立金は408億円で、232億円は利子の支払いだけで消えていくことになる。

 バブル前の利子の高いものはかなり少なくなったが、それでも公債費の内の2割が利子の支払いで消えてゆく。今回、職員のリストラ、経常経費の削減、臨時予算の削減などで収支不足額75億円の解消が行われたが、それをはるかに超える金額が一般会計の利子の支払いだけで消えていってしまうのである。

 バブル期の事業の付けである利子払い等でこの4年間で1559億円が消えていったことを考えると、過去の財政運営の反省が必要だ。過去の借金の返済で、現在の市民が苦しむという構図になっている。

 神戸市を支えてきた起債主義がこういう形で破綻しているということだ。世代間公平論を主張していた神戸市当局の起債主義肯定論は過去の借金で今の世代が苦しむという現実となっている。




B、公債費比率と起債制限比率について


・12年度で23.4%13年度で24.2%、14年度で24.7%、15年度で25.8%、16年度26.0%がピークとなり、平成17年度で24%程度と若干好転し、今年度で21.0%と目標にしていた20%以下が見えてきた。しかし、国の三位一体改革の動向や特別会計の今後が不透明で危険水域は変わっていない。

 20%を越えると一般単独事業債が起こせなくなる。自治体財政の破綻を食い止めるためにある手法で、一般会計の市債が対象となるが、企業会計など収益事業の市債については計算の対象とならない。今年度の予算を見ても起債制限比率を押し上げる一般会計の市債の発行額は減らそうとしているが、起債制限比率の計算に含まれない企業会計など収益事業については市債の発行を抑える必要はなく、したがって空港事業や港湾事業、新都市整備事業、高速鉄道事業などではまだまだ市債が発行できる仕組みだ。

 神戸の場合、本来であれば一般単独事業債は認められないところだが、震災特例で認められている。震災がなければ起債制限で大変になっているところだ。財政的には震災を理由にして、通常事業を震災復興事業に含めて、補助率の高い事業に仕立てそして、起債制限比率が20%を超えても特例で一般単独事業債が認められるなど、震災に財政運営が助けられたのが実態だ。

 しかし、この特例も平成20年度までに起債制限比率を20%以下にすることが前提と国に約束させられている。したがって、投資的経費や物件費を減らし独自事業を抑え、行政経営方針による指定管理者制度による民間委託の推進や新規採用の抑制、経費の削減が至上命題となっている。今年度の予算案はまさにこの方針が貫徹している。節約型の特徴なき予算となっている。

 
5、企業会計収支の現状



・8会計の内2会計が赤字予算。港湾事業会計は黒字基調となったが、貨物は若干の改善は進んでいるものの震災前の水準には程遠く、安定的とは言えない状況だ。実際には3200億円の企業債を抱え、ポーアイや神港突堤など空きバースや背後地などの売却処分ができなければ大変なことになる。新規バースができるたびに、古いバースが空いていくという仕組みそのものを見直すことが必要だ。しかし、この反省もなくスーパー中枢港湾に大阪港と共に指定されたということで、ポーアイ2期のPC18東岸を新たなコンテナバースにし、水深16メートルの耐震強化岸壁を造り、六甲アイランドRC7についても水深15メートルへ増進することが、昨年港湾審議会で港湾計画の変更が行われた。この事業は国と神戸市で313億円かけるという新たな大公共事業だ。世界の港湾事情は船社の競争激化の中でコンソーシャムという企業グループ化が進められて、たとえば専用バースを一船社でなくグループで利用するなどコスト削減が計られている。そのため、どこの港でも空きバースがでるなど問題が顕在化している。このときに、また新たな大水深・高規格バースを建設するなど自殺行為だ。港湾関連用地だけでまだまだ売れ残りがあり、公共専用バースの3割以上が空きバースになっている、このことの解決こそ優先するべきだ。

・公共デベロッパーに象徴される神戸の開発行政を支えてきたのは新都市整備事業だ。
 
新都市整備事業会計は平成12年度末実績で基金や現金預金で使えるお金は1859億円あったが空港埋立がピークを迎えた平成16年度では1350億円にまで減り、今年度では1200億円程度にまで落ち込んでしまった。
 そして、平成18年度末見込の企業債は3591億円になり、このまま店じまいをすれば逆に、2000億円を超える借金を抱えるということになる。したがって、ポーアイ二期や複合産業団地、そして空港関連用地、宅地分譲などが進まなければ2000億円の不良債権の土地を所有するということになるわけだ。平成18年度の土地売却収益見込は236億円(前年度250億円)で前年度よりは少し減で、平成元年度には土地売却収益の実績が890億円あったことを考えると650億円を越える減収となっている。今年度から、とうとう一般会計への繰入れもできなくなった。民間への土地売却はポーアイ2期に限らず、好調だった西神での宅地分譲も進んでいないことが大きな原因になっている。






ポーアイ2期での土地処分が進まず、起債の償還ができず平成13年度には108億円、平成14年度には132億、平成15年度では128億円そして平成16年度予算(予)では154億円、平成17年度(予)で5年間で639億円を借換えする財政措置をとらざるをえなくなっている。また、流動資産から流動負債を引いた資金残高も平成10年度に875億円あったものが平成18年度予算では222億円とこの8年間で653億円も減少している。

 平成18年度予算では、基金が1273億円ありながらも企業債の未償還残高が3591億円もあり、既にポーアイ2期の償還が始まっているが、土地が売れない中、借換えで償還を先送りせざるおえない状況が続いている。これに、空港事業にかかるポートアイランド沖事業での起債1982億円の償還が始まれば、年間の償還額が多額になることが予想される。空港島造成事業の起債償還が始まる平成21年から4年間でポーアイ2期の借換え分の償還を合わせると1800億円もの起債償還がやってくる。

 ポーアイ2期や複合産業団地では3割から5割引きでの土地売却交渉が進められているがほとんどが賃貸で分譲は進んでいない。長期金利の上昇が予想される市況情勢の中でいつまでも借換債では対応できないことは明らかだ。これまでのように土地処分が進まなければ、神戸市が一番期待を寄せるこの新都市整備事業が、神戸市を倒産に追い込む大きな爆弾となりかねない。

・高速鉄道事業は 平成18年度末市債残高は2312億円となり、海岸線は開業して今年で5年目を迎えるが1日の乗降客が40000人と予想し、当初見込み80000人(計画段階は130000人)からほど遠く、収支も今年度39億円(前年度45億円)の赤字を見込んでいる。平成18年度に海岸線のランニング収支の赤字を全線で解消するとしているが、支払い利息なども含めたトータルでの純損益を黒字にする経営計画は今でも明らかにされていない。また、当年度未処理欠損金は1167億円で平成17年度1125億円、平成16年度1062億円、15年度1008億円で、毎年50億円近くも膨らんでいる。昨年の神戸市の包括外部監査報告では「正確な需要予測と手堅い収支計画を軽視して、希望的観測に基づく過大な需要予測を前提とした非常に甘い計画」と指摘。そして、震災後、「勇気ある撤退を表明すべきでだった」とまで酷評している。

・自動車事業会計は4年続きの赤字予算だったが、今年度は9000万円の黒字予算に。地下鉄海岸線の開業に絡んでバス路線の全面見直しを行なったが財政的な効果は見られず。結局は路線の切り売りと営業所の民間委託による人減らしで対応することに。したがって、新たな経営計画「レボリューション」が発表され、平成18年度の単年度収支均衡を計るということで、4営業所(魚崎、松原が平成17年に)(落合、西神が平成18年に)が民間に管理委託され、西神の5路線が神姫バスに路線委譲されることになった。結果、平成17年、平成18年で合計542人が削減さた。しかし、平成18年度末の未処理欠損金は314億円もあり、一時しのぎの削減計画だけでなく、新たな路線の開拓やワンコインバスやコミュニテイバスの検討など、市民住民の目線に立った市民の足としてのバス事業の再構築が求められている。

・病院事業会計は3年連続の約2億円の赤字予算。繰出し基準の見直しで病院職員の退職金負担が一般会計補助からはずされたことが原因。病院事業会計は今後中央市民病院移転立替問題が大きな課題に。医療産業都市構想を支えるために中央市民病院が先端医療センターと隣接するポーアイ2期への移転のための基本計画がだされ、今年度は基本設計に着手。中央市民病院は、現在でも建設時の残債を100億円残し、累積欠損金は平成18年度末で340億円にのぼっている。2月に発表された基本計画によれば移転新築費用は土地代含めて480億円の建設費が必要に。また、病床数が912床から640床になり、市民から利用しにくい病院になるのではないかとの危惧の声が広がっている。そして、建設と運営資金を節約するためにPFI方式での建設が提案され、運営については独立法人化などが検討されている。市民の健康を守ることに全力をあげるべきの市民病院が、建設負担による財政的な理由から効率化を優先し、しかも先端医療センターとの連携を強めるがゆえに、市民から名実共に遠い存在になってしまうのでないかとの声が上がっている。

・水道事業会計は今年度も4億円近くの黒字に。今年は過大投資になる原因といわれた水需要予測を全面的に見直すということで、長期を見通した水需要問題が焦点に。

・下水道事業会計は11億円の黒字に。一昨年度、一般会計からの繰出し基準の見直しで一般会計から補助が55億円の削減されたが、みなし償却の適用の拡大や雨水処理経費の見直し、企業債の一括償還などの工夫がなされた。ただみなし償却には問題もある。この手法によれば、減価償却費が減少するため収支は好転するが、資金的には補助金等相当額が会計内に蓄積されないため、改築・更新時に再度の財源措置が必要になるということだ。当局は国の動向が改築・更新などに国の補助が廃止されることは当面ないだろうとの判断でみなし償却を行ったということだが、国の補助金削減の方向が今後も続くことからこれも不透明といわざるを得ない。当面は市民の負担増は回避するとの答弁がなされているが、更新が集中する時期での資金不足が心配される。


6、特別会計

・市街地再開発事業についても、平成12年度で市債残高が582億円であったものが、平成16年度末には1121億円に膨れ上がり、更に平成18年度末には1217億円にもなる。新長田駅前での復興再開発もピークを過ぎた。しかし、再開発は保留床を売却することによって事業費を生み出す手法であり、土地が上がるということが前提になった手法である。したがって、バブルが崩壊して土地神話が崩れている今の状況の中で、保留床が高く売れて事業費が還てくることが難しくなっている。現在多くが賃貸に移行する現状にあり、事業費が還えってくることはますます難しくなってきている。
 
 新長田再開発事業については、これからの事業については当初計画の見直しが行われているが、まだ全体の財政計画が明らかになっておらず、長田での利害住民だけでなく、市民的な合意のためにも早急に財政計画を明らかにすることが求められている。海のポーアイ2期と陸の市街地再開発事業はある意味で同じ現実に直面している。同じように1000億円を超える借金を抱え、売れない土地と保有床を大量に抱え、賃貸への変更など、まさに海と陸の双子関係にある。


海岸環境整備事業会計での、アジュール舞子事業については元利償還総額が194億円で、償還済み額が平成17年度末見込みで116億円で、その内一般財源が平成10年から17年までに、既に77億円が投入されている。平成18年度予算では更に9億円の一般財源が使われ、累計は86億円に。今後まだ、償還しなければならない82億円については計画は未定である。本来この事業は、土地造成して、これを売却して、事業費を賄うと言うことで、一般財源は基本的に使わないということだった。
このままいけば、一般財源で海に公園を造っただけの事業になりかねない状況がでてきているということだ。そうであるならば、当初の財政計画を変更して、市民に一般会計からの負担を求めざるを得なくなったことを明らかにして、財政計画が既に変更されしまっていることを正直に市民に明らかにするべきだ。そして、使った一般財源についてはできる限り変換するような担保が必要になっている。このように、バブル時代にはじめた第3セクター事業やCCZ事業がことごとく失敗に終わり、そのツケに多額の資金(市民の税金)が使われている。これと同じようなことが新都市整備事業で始まれば神戸市財政は大変なことになりかねない。
7、今年度予算の主要施策の問題点について

@神戸市国民保護計画の作成が始まる

 今回の予算案に国民保護計画の神戸市版の策定の予算が盛込まれた。すでに兵庫県段階では「県計画」が作成され、市町村段階での策定作業が平成18年度から始まる。しかし、 国民保護法をふくむ有事関連法は、軍隊をもたず、交戦権を認めず戦争放棄をうたった日本国憲法に明確に反するもので、これにもとづく国民保護計画も国民を保護するといいながらアメリカの起こした戦争に国民を巻き込むものでないかとの危惧の声もあがっている。 国民保護法に基づき一昨年3月に閣議決定された「国民の保護に関する基本指針」では「冷戦終結後10年以上が経過し、我が国に対する本格的な侵略事態生起の可能性は低下している」と自ら認ているにもかかわらず、武力攻撃事態の想定として@着上陸侵攻 Aゲリラや特殊部隊による攻撃B弾道ミサイル攻撃 C航空攻撃の4つの類型を想定しいる。

 しかし、今年1月に消防庁が示した「市町村国民保護モデル計画」では、着上陸侵攻やその前提となる反復した航空攻撃などの、本格的な侵略事態にともなう避難については、国の総合的な方針に基づき避難を行うことを基本として、平素からかかる避難を想定した具体的な対応については定めることはしないとして、避難マニュアルは記述されておらず、着上陸侵攻や航空攻撃が現実性のないことを自ら認めている。したがって、 東南海・南海地震は30年以内に50〜60%の確立で起こると言われている中、起こる可能性の少ない戦争に備えるより、近い将来必ず起こり、避けることのできない自然災害対策の強化・充実が自治体の責務だ。

 着上陸進行などの本格的な侵略自体が想定できない今、万が一、テロなどが起きても、防災計画をより充実させることで対応でき、昨年11月に開催された兵庫県国民保護フォーラムでも、軍事アナリストの小川和久氏は、防災という基礎問題が十分できていれば、有事への対応という応用問題は対応できると強調された。


A65歳以上の高齢者への税控除制度の改悪で
  社会保険料大幅アップへの手厚い救済制度が必要


 
 老年者控除の廃止、公的年金控除の切り下げ、老年者非課税措置の廃止により、収入が変わらないのに年金生活者・高齢者の住民税は大幅値上げとなっている。ところが、今年6月からは、この住民税を算定基礎にしている国民健康保険料などの社会保険料が、大幅アップとなる。

 今まで課税されている人はもちろん、今まで非課税であった65歳以上の年金生活者・高齢者が、老年者非課税措置の廃止などで、非課税から課税になると、今まで適用されていた国民健康保険の減額・減免措置がなくなり、さらに、市県民税額の約5倍の所得割が、基本の保険料に加算されることになる。

 介護保険料では課税世帯となり、保険料基準が、本人は2段階上がり、配偶者は非課税でもl段階は上がることに。また、老人医療費助成制度は、課税となれば非該当とされ、一般と同じ負担となる。70歳以上の高齢受給者や老人保健法該当者は、医療費の負担割合や医療費負担の限度額にも影響。「政令月収」も上がることから、公営住宅居住者の家賃も上がることになる。さらに、非課税が条件になっていることが多いさまざまの福祉施策にも波及することに。非課税から課税になった年金生活者・高齢者や、大幅な負担増になった高齢者に対する、減額措置や減免制度・激変緩和のための経過措置など、手厚い救済制度が必要になっている。

 国民健康保険料について国は一定の激変緩和措置を講じ、神戸市も今回の予算案でそれに上乗せして激変緩和策や独自減免を行うとしているが、その対象者は年金収入のみの場合は収入が246万円から266万円の一部でその対象者は5000人だ。しかも2年間の経過措置で予算額はわずかに1億円。また、介護保険でも、今回の税制度で大きく影響を受ける層の激変緩和措置がとられたが、いずれも2年間の経過措置。その枠に入らない年金収入300万円65歳以上、配偶者65歳未満収入なしを例にとるなら、17年度の市県民税が6200円が平成18年度では48400円で国保と介護の社会保険料は18万円が39万円と21万円もの負担増になる。実際には、保険料率が下るから、これよりは低い負担になるが、いずれにしても今回の予算案での救済策では極めて不十分だ。

 また、政府の税制大綱では平成19年からは地方住民税10%一律課税との方針が既に打ち出されており、これが実施されれば課税所得200万以下の税率は現行5%が一挙に10%に引きあがることになり、そうなれば神戸市国保制度そのものの見直しも求められる状況だ。


B介護保険制度が全面見直しに

 国の介護保険制度の見直しに対応して神戸市は第3期介護保険計画をまとめ、4月1日から実施するとしている。今回の見直しで料金は第1号(65歳以上)被保険者の保険料基準額を月額4694円(従来は3445円)に、最高は82%アップの9388円(同5168円)になり年金生活者の場合2ヶ月で1万円を超える負担の対象者が続出することになる。しかも、介護予防という制度が導入され要介護・要支援の枠が細分化され、今まで受けていたサービスが受けられなくなる対象者もでてくることになるなどたくさんの問題点が指摘されている。更に、介護報酬が最終的に明らかにでなく、家事援助やケープラン作成費等でかなり報酬が削減される見通しで、事業者にとっても事業の継続に大きな支障が出る可能性もある。

C保育所の民営化、今年も

 今年度も兵庫の大同、垂水の千鳥が丘、西区の枝吉3保育所が民間移管の対象になり既に保護者説明会が始まっている。前年は4月の新学期へ入っての唐突な発表で、混乱したことを反省し、1年前の12月から説明が行われている。

 しかし、既に移管法人が決まっている3保育所も、鈴蘭台北保育所では今だ混乱が続き議会に請願や陳情が多数寄せられてきている。当局の対応への怒りだけでなく、やはり保護者の公立保育所へのこだわりがこれほど強いことを当局は肝に銘じるべきだ。神戸市は、「1園につき5000万円の節約になる。保育内容は低下させない」としている。しかし、保護者からは「5000万円も削減して保育低下にならないとはどういうことか」「保育士が来年すべて入れ替わったら、子供はどうなる」など反発の声がでるのも当然だ。

 保育所はすべてが公営でなければならないとはいわないが、神戸ではすでに、公営と民営の保育所が半ばしており、今あえて公営保育所を民間移管しなければならない理由が見つからない。しかも、昨年も今年も対象の3保育所は立地や評判もよく待機待ちも多い人気保育所です。運営がやりやすいところは民間に、困難な課題があるところは公営という考えがあるなら、長期的な考えや計画を明示するべきだ。


D開港も、すべての課題が先送りの神戸空港
 
イ、責任を不明確にした神戸空港賛否住民投票条例の否定

 神戸空港が2月16日に開港した。開港を祝うイベントも花盛りだが、開港当日も反対や抗議の集会が多数企画された。マスコミの調査でも半数を超える市民が神戸空港の建設に今も反対しているなど、空港が市民の市政に対する不信の大きな要因になっている。
 賛成・反対いずれの結果になろうとも7年前の住民投票がなされていればと残念でならない。神戸空港開港後の結果がどうなろうと住民がその結果に責任持つことができたと思うのだ。住民投票直接請求運動を、神戸空港反対運動としてしか与党会派や当時の市長に認識されなかったことは、極めて残念であり、運動を進めた私たちの努力の不足を反省しているところだ。市民自治の飛躍のチャンスを逃したことが神戸市政の今後に暗い影を落としている。そして、私たちが指摘してきた神戸空港の必要性、需要予測、財政計画、空域調整、安全性、海洋環境など未解明・未解決の課題はすべて開港後に先送りされた
安全性、海洋環境の問題など未解明未解決の課題が開港後に先送りされてしまいました。

ロ、値引きが財政破綻の始まり

 空港島造成事業では神戸市が購入した土地は別として、民間に売却予定が確定した土地は、業務施設用地で、土地の値段を3割値引きした0.3fだけ。開港前にして、旅客・貨物ターミナル、駐車場用地を除いた民間売却予定地82.6haのごくわずかだ。当局は「建設事業費を100億円圧縮したからその枠の中で値引きによる売却を進める」と答弁している。しかし、3割引で売っても100億円の枠では12haしか売れない。当局は「誘致をはかることによって、土地の価値を高めることができる」と、27万円という高値に戻すことができるとの趣旨の答弁している。しかし、今回の空港業務施設は駅でいえば駅前の土地であり、本来はもっとも不動産価値の高いところであり、そこを値引きしておいて、空港からもっとも離れている処分緑地が1平米27万円で売れるとはとうてい思えない。しかも、空港周辺用地は航空法によって高さが規制されおり、土地の高度利用もできない制限された利用の土地だ。制限された土地利用しかできない、市街地から離れた空港島の土地がポーアイ2期や複合産業団地の3倍もの値段で売れるはずもない。仮に売れたとしても3割引で470億円、5割引だと1000億円もの収支不足が指摘されている。3年後から4年間で1800億円もの起債の償還を行わなければならず、その財源が確保されなければ神戸市財政破綻につながりかねない現状だ。

ハ、管理収支は長期的にも黒字?

 2月21日神戸市みなと総局は、平成18年度〜平成27年度までの「神戸空港管理収支の見通し」を発表した。いずれの年度も黒字というもので、神戸空港は大成功との長期見通しだ。中味を分析すると、管理経費では当初10億円要するとしていたものが7億円に激減。人件費を34人から18人に圧縮した。着陸料以内に管理経費をしなければとの前提で職員数を割りだした経過が丸見えだ。また、沖縄便の着陸料の減免が平成18年度で元に戻り、地方路線初便の着陸料等の減免が平成20年度で終わると、都合よく見積もつたもの。また、機材も徐々に大型化して平成21年からジャンボ機が4機も就航するという前提での黒字だというのだ。航空機業界は機材を大型から中型機にシフトする傾向にあり今後はジャンボ機をなくする方向が打ち出されているときにこれと逆行する計算だ。また、黒字は一般会計に還すのが本来と思うが、積み立てるというのだからやはり起債の償還が10億円を超える平成21年度からは不安だということを証明している。また、この会計には新都市整備基金から借入している70億円の返済計画が見当たらない。

ニ、問われる安全性

 そして、空域の安全性についても多くの航空関係者から3空港の併存の中での問題指摘が相次いでいる。しかし、神戸市はコンピューターによる広域一元管制が万全であり安全だと主張している。しかし、航空会社から要請のあった慣熟飛行は行われたが、当初予定した実機飛行テストは実施されず、シュミレーションでの実験が行われているだけだ。過密空域における管制業務は究極的には人的作業によらざるを得ず、人的過誤を避け得ない現実を直視するべきだ。


Eポーアイ2期への移転ありきの中央市民病院

 先端医療センターと中央市民病院を隣接させようと平成14年からら移転の話がでてきた。そして、一年間かけて懇話会が開かれ、懇話会報告がだされ、この懇話会で新社会党の代表や市民代表は、「現状の市民病院は将来の拡張を前提に設計されており、改修で現状の医療ニーズに十分答えうる。したがって移転の根拠が不明確だ」「住民の利便性からも現地改修が望ましい」「神戸市の財政事情が大変な時に600億円もの移転建設費用をだすことは市民感情からも認められない。しかも、起債の未償還がまだ100億円もある。財政上移転は無理」などの主張を行った。また、神戸医師会も「現地で改修するべき」と私たちと同じ主張だった。

 そして、最終的に懇話会は移転と現地改修、そして外来を現在地に残すとの3案併記の答申をだした。ところが、一昨年2月突如「移転方針報道」、そして矢田市長の3月3日の本会議での「私としては先端医療センターと隣接するポーアイ2期が望ましい」との発言が飛び出し、神戸市は一昨年7月にポーアイ2期の先端医療センター隣接地への移転を前提にした構想案がで、平成18年2月には基本計画案が発表された。基本構想案へのパブリックコメントではほとんどの市民意見が移転ではなく現地での改修を求めるものが多かったにもかかわらず、基本部分に関わるものについては変更の意思がないと簡単に踏みにじった。

 私は、これまで「移転ありき」で市民の利便性や患者の声を後回しにするような議論の仕方そのものに、憤りを感じている。基本計画案は「名実ともに市民から遠ざかる」移転計画だ。新計画ではベット数が900床から640床と300床も減ることに。また、先端医療センターの臨床の役割も果たすということだから、その部分のベット数も減らされることになる。今でも、入院の待機患者が多く、入院してもすぐに退院させられるなど不満が出ているが、ベット数の減少で今以上に待機の患者が多くなり、在院日数も減らされることは確実だ。また、建設費は土地代も含めて480億円でPFI方式で建設して運営は独立法人化も含めた検討を行うということだ。 

 そもそも、現在の市民病院は将来も改修して長く使えるようにと、当時の宮崎市長が、わざわざ空き階をつくり、改修時にはその階を利用しながら改修できるようにあらかじめ設計されている。そうであるのに、なぜ移転新築なのか。それは、医療産業都市構想と深く結びついている。医療産業都市の中心をなす先端医療センターでは臨床部分が弱いこと、また資金的な手当ても難しいことから、中央市民病院と一体化することでこの問題を解決しようということだ。成功するかどうかわからない産業化のために市民の健康と安心、そして利便性が後回しにされていいのか、自治体病院としての責務が問われている。



F医療産業都市に既に867億円が
    投資20年間毎年12億円総額240億円も投入


 
医療産業都市構想の推進に今年度24億円の予算がついた。医療産業都市構想は、臨床病床を持つ先端医療センターが平成15年度から本格稼動した。理化学研究所が運営する発生・再生科学総合研究所も本格的な研究活動が始まり、構想から具体化に移りつつある段階となってきた。しかし、進出企業のほとんどがベンチャー企業であったり、医療産業ではあるけれどもビルの一室を借り受けているだけの状態で、与党議員からも、研究活動先行で産業化への目途が立っていないのではないかとの疑問の声もあがっている。そして、医療産業都市構想が市内中小企業の振興に大きな役割を果すことが期待されているが、医療器械・器具ではあまり目立った開発成果は見られない。医療産業都市を国から支えてもらうための医療特区も混合診療や外国医師の参入問題など規制緩和になるのでないかと神戸市医師会の多くも反対しており問題を残している。

 医療産業都市構想には、現在、国費も含め、ハード、ソフトを合わせて総額 867億円のお金が投入されている。その内訳は施設建設などのハード面では神戸市、国で332億円。基金などで91億円。それに国の公的研究費が444億円。その合計が867億円と言うことだ。そして、この332億円のハード整備で神戸市が直接建設整備したのが150億円で、国が建設整備したのが186億円、それに民間の都市振興株式会社が建設整備したものが21億円になる。また、91億円は基金等に出捐した61億円、国の方から6億円、これはプラットホームでこの推進のために毎年補助をしている経費だ。そして、国の公的研究費の 444億円の内訳は、先端医療振興財団に来たものが105億円、直接理研の方に行ったお金が339億円。この中で市民の税金である一般財源は、将来の起債償還分も含めて、ハードの整備の中に73億円が入っており、ソフト面の基金等で65億円が今までに出ている。これを合わせて 139億円が一般財源として既に神戸市が投資しているということになる。

 当局は設備投資はほぼ終わっていると説明しているが、先端医療センターの運営費は毎年12億円を一般財源から負担するとしている。しかも、空港新産業特別委員会での答弁では12億円を最低でも20年間は必要ということで、これらを計算するとなんと240億円も一般財源から持ち出すことになる。


これには研究者の人件費などが含まれておらず、研究が本格化するときには外国からも研究者を招く必要があり、この人件費も今後膨れていくことは確実だ。将来的に、先端医療センターへの投資も含めて総投資額が一体いくらになるのか。また、企業誘致がどう進み、税の還元やパテント収入などがどう見込めるのか。財政的な長期見通しが依然として明らかにされていない。