最終話「輝け! プリンセスナイン」
対如月高校戦は土壇場9回表、ツーアウトランナー一塁。打順はトップに戻って森村。
森村は奇策のセーフティバント。ピッチャーの正面に転がるが、自慢の俊足を飛ばして一塁を陥れる。
続く二番・吉本もまた秘策を披露する。左打席に入り、見事安打を飛ばす。これで二死ながら満塁。
父親の容態を気に掛け、集中出来ない三番・堀田の元へ、毛利が高知から届いたファックスを見せる。
そこにはただ一文字、墨痕も鮮やかな「風」の文字。
それはかつて、堀田が涼との三球勝負で破れた時、「風を読み、潮を読む」ことを教えた、その意味を込めた父からの激励だった。
堀田は調子を取り戻し、豪快な荒波スイングで打球をセンターバックスクリーンの遙か後方まで運ぶ。これでスコアは一点差。
4番・いずみは高杉への思いを吹っ切り、外野の頭を超える長打を放つ。暴走気味に三塁も蹴り、好スライディングで本塁に生還。ついに同点に追いつく。
5番・東の打球は一、二塁間を破ろうかという痛烈な打球。だが、ファースト・高杉の好捕に阻まれる。
ナインの奮起にもまだわだかまりの残る涼に対し、いずみは昨日の出来事の真実を語り、誤解を解く。
再び胸を張ってマウンドに登る涼。だが、体力は既に限界を超えている。打席に入る高杉に対し、ボールが三つ続く苦しい展開。
涼は疲労に耐えきれず、マウンド上に膝をつく。そこへ高杉の叱咤が飛ぶ。最後の闘志を振り絞り、立ち上がる涼。
「一番最後に一番凄い球を投げた」と言われる父・英彦を彷彿とさせるイナズマボール。空振りとファールで高杉をフルカウントまで追い込む。そして最後のイナズマボール。が、名にしおうスラッガー・高杉はこれを左翼方向へと弾き返す。レフト・東はフェンスによじのぼってグラブを伸ばすが、打球はその上をかすめてスタンドへ。サヨナラホームラン。スコア5対6。如月女子は無念の敗北を喫する。
しかし、如月女子高野球部の闘いは終わらない。来年に向けて、今から彼女たちの本当の闘いが始まる……。
『プリンセスナイン――如月女子高野球部』
(c)1998 伊達憲星 フェニックスエンターテイメント
NHKエンタープライズ21