・・・ < 解 説 6 > ・・・
■ 社会権規約委員会と一般的意見 ■
社会権規約委員会は、社会権の実現のために設置された、国連内の機関です。18人の専門家が、個人の資格で委員を務めています。設立が1985年、活動開始が87年とまだ歴史は浅いのですが、その積極的に活動しています。
委員会の主な仕事として、2つのことがあげられます。1つは加盟国が送ってくる「社会権に関する報告書」を審査すること、もう1つは、権利の基準や加盟国の義務などを示して権利の実現を促進することです。
この委員会が設置される前の社会権の報告制度は効率が悪く、加盟国の報告がとどこおったり、報告が出されても内容や審査が表面的すぎるという欠点がありました。しかし、報告すべき項目を具体的に表したガイドラインの作成や、報告書を出さない国に対しての強制審査など、委員会の尽力で、再び活発で有効なものになりつつあります。(「報告義務」参照)
あいまいになりがちな諸権利の基準や加盟国の義務について、具体的、普遍的な基準を示すために出されているのが「一般的意見(General Comment)」です。社会権規約委員会からは、1989年から今までで14の意見が出され、法的拘束力こそありませんが、世界の人権活動たちの大きな拠り所として重要視されています。その内容は次のようなものです。
1:加盟国の報告義務の目的 、2:国際技術協力、3:加盟国の義務、4:適切な居住、5:障害者、6:お年寄り、7:強制立ち退き、8:経済制裁と社会権の関係、9:国内での規約の適用、10:人権機関の役割、11:初等教育、12:適切な食糧、13:教育、14:健康。(参考資料集:「一般的意見集」 & 「一般的意見原文目次」)
特に「居住の権利」と直接関係が深いのは、4と7でしょう。4の「適切な居住の権利」は、「居住の権利とは人が安全に、平和に、尊厳を持って生活をする権利のこと」と明言し、適切な住まいが満たすべき条件などを述べています。7の「強制立ち退き」は、強制立ち退きが基本的に国際人権規約の精神に反することを明確にした上で、どういう行為が「強制立ち退き」に当たるか、どうしても「強制立ち退き」を実施しなければならないのであれば、当事者に対しどういう保護や補償がなされなければならないかが述べられています。
ちなみに、自由権規約委員会からは、1981年から26の一般的意見が出されています。男女の平等、生存の権利、拷問、自由と安全の権利、表現の自由、戦争宣伝の禁止、核兵器、子供の権利、プライバシーや名誉の尊重、婚姻、宗教の自由、公共に参加する権利、などです。
一般的意見に書かれているのは、世界のどこにいても、誰であっても、一人ひとりの権利が守られるための基準ですから、まず人々にその内容を知らせる必要があります。残念ながら日本は、国際人権規約に加盟しているにも関わらず、こうした作業にあまり熱心ではなく、行政機関による和訳さえ出ていないのが現状です。