・・・ < 解 説 3 > ・・・
■ 国際人権規約に加盟した国の「報告義務」 ■ 国際人権規約を批准した国には、国内で人権実現のためにどんな努力をしたか、人権実現や保護の状況がどれだけ進歩したかなどを、国連に報告する義務が課せられます。「居住の権利」の大きな拠り所となる社会権規約については、効力の発生時から2年以内に第1回報告書を、2回目以降は5年ごとに提出することになっています。
報告書を作るに当たっては、「政府報告書の形式と内容に関するガイドライン(1992年改訂)」に沿うことが求められます。ガイドラインの内容はかなり詳細です。「居住の権利」の項目を見てみると、住宅や人々の暮らしぶり、強制立ち退きの実情などについての具体的で詳細な情報や統計、権利の実現のための法律や措置について、きめ細かい報告項目が作られています。
報告書の提出を義務づける大きな目的は、その国の実情を国際水準に照らし合わせて評価し、人権実現のための勧告やアドバイスをすること、そして加盟国自身にも自国内での人権の実現状況を見直す機会を与えることです。加盟国には、報告に必要な情報や統計を積極的に得ようとする努力が求められます。
提出された報告書は、社会権規約委員会によって審査されます。
まず報告書審査に先立ち、作業部会が政府に対する質問表を作り、政府に送ります。ここで参考とされるのは、政府報告書の内容はもちろんですが、国連の専門機関やNGOなどから提出される情報です。この質問表について、政府はなるべくなら事前に書面での回答を行い、さらに質問に答えられる、できる限りハイレベルの人材を報告書審査に送ることを求められます。
審査では、まず政府代表が簡単に報告書の内容を述べ、質問表について回答します。この次に、国連の専門機関が情報を提供することがあります。ついで委員が、それぞれ各自の持っている情報に基づいて、政府代表に質問をします。一連の質疑応答が終わると、委員会はその国に対する評価をまとめ、これを最終所見として採択します。最終所見は審査を受けた国に送られ、委員会の報告書にも掲載されます。採択された最終所見は公開で、国連のホームページ上でも見ることができます。
社会権規約委員会はスイス・ジュネーヴで年3回、3週間の会期で行われます。
日本政府は1998年6月、第2回社会権規約報告書を提出しました。社会権規約委員会による報告書審査は2001年8月21日に行われ、同31日に最終所見が採択されました。