適切な居住の権利 - 強制立ち退き 一般的意見7

・・・パート II(5〜9) ・・・


5。強制立ち退きは、人口密度の高い都会で行われることが多いように見えるかも知れません。しかしそれ以外でも、強制移動や国内避難民によって、あるいは武力紛争による強制移住、大規模な集団移住や難民移動との絡みによって、強制立ち退きは起きています。こうした状況の下では、適切な居住の権利や強制立ち退きを受けないという権利は、締約国がとってはいけない行為をとることによって、あるいはすべきことをしないという怠慢によって、さまざまな形で侵害されます。仮にこうした権利を制限する必要性が認められるような状態があったとしても、制限の形と実行は社会権規約第4条に完全に沿っていることが求められます。権利の制限は「これら(経済的、社会的、文化的)権利に一致する限りにおいて、また民主主義社会での一般の福祉を推進する目的のためにだけ、法律によって決定され」なければならないのです。

6。強制立ち退きの多くは暴力と結びついています。国際武力紛争や、国内での動乱、宗教や人種の違いから起こる暴力などです。

7。その他に開発という名の下に起きる強制立ち退きがあります。土地所有権、開発やインフラの計画をめぐる紛争、つまりダムなどの大規模な発電施設の建設計画、都市再開発にからむ土地の買上政策、住宅改造、都市美化計画、農業目的の土地の整備、土地への無制限な投機、オリンピックなど大きなスポーツイベントの開催に関連して、強制立ち退きが行われるです。

8。本質的に、第11条1に基づく強制立ち退きに関する締約国の義務は、他の関連条約との関連において読みとられるべきです。特に第2条2は、締約国に対して適切な居住への権利を推進するために「あらゆる適切な方法」を用いることを義務づけています。しかし強制立ち退きという行為の性質を考えると、「資源の利用可能性に基づく漸進的な達成」をうたう第2条1は、まず関連を持たないでしょう。締約国自身も、強制立ち退きを行わないようにしないといけませんし、自国の行政や第三者に強制立ち退きを実施させないような法律を確立すべきです(本文「3」参照)。さらに、こうした方法を強化するのが、市民的、政治的権利に関する国際規約(自由権規約)第17条1で、この条項は、適切な保護なく強制立ち退きを受けないという権利を補足するものです。特に自分の家に関して、「恣意的あるいは不法な関与」から守られる権利を認めています。留意すべきは、締約国はこの権利が確実に尊重されるようにするという義務を負い、その義務の大きさは、その国が利用できる資源や手段によってかわるものではないということです。

9。規約の第2条1は、締約国が「全ての適切な方法」を使うことを要求しています。ここには規約にうたわれている全ての権利を実現するために必要な立法措置も含まれます。一般的意見第3番(1990)の中で委員会は、こうした立法措置は必ずしもすべての権利に関して不可欠ではないかも知れないと述べました。しかし、強制立ち退きをゆるさない立法措置が、効果的な保護制度を作るための基本だということは明らかです。このような立法措置には、(a)その家や土地に住む人々がそこに住み続けられるという保障を最大限に提供する、(b)人権規約に沿った、(c)立ち退きが起きかねない状況をきびしく管理するように計画された、施策が盛り込まれるべきです。また、この立法措置は、国家の権力のもとで動く、あるいは国家権力に対して責任を負う業者すべてにも適用されなければなりません。さらに、国家が住宅分野における責任を非常に小さくしようとする風潮が強まっている点を考慮し、締約国は、適切な保障条項なしに民間人や民間組織による強制立ち退きが実行されないように、また適切であれば、強制立ち退きを処罰するような立法、その他の対策を確実に立てなければなりません。従って締約国は、関連の法律や政策を見直し、確実に適切な居住の権利にもとづく義務に一致するように、規約の要求に合わない法律、政策はいかなるものも廃止、改正すべきです。



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[訳/文責:渡辺玲子 / 監査:中井伊都子]

 これは専門知識がなくても理解しやすいように、訳に補足説明を加えるなどして作られています。用語の訳など、外務省と異なる部分があることをお断りします。詳細については、英語原文、専門家訳バージョンをごらんください。

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