・・・ < 解 説 2 > ・・・

■ 日本と国際人権規約との関係 ■


署名・批准(ひじゅん)について

 国際条約や国際規約というのは、国際社会における約束事です。国と国との間で交わされることもありますし、国際機関が関わることもあります。また人権規約のように「みんなで守りましょう」というものもあります。条約や規約に「国が署名する」というのは、日本の行政府の代表である大臣などが「文書」に合意したこと、すなわち国際社会に、その条約や規約のような約束事が存在すべきだということに賛成したということです。

 各国が具体的にその条約・規約に加わり、守っていくかどうかの決定には、その国の中での手続きが必要です。日本の場合、日本が合意した規約は、次に日本の立法府である国会で審議されます。国会で「よろしい、この条約を承認しましょう」ということになれば、「批准(ひじゅん)」という手続きを取り、国連に「批准書」を提出します。これで日本は、国内的にも国際的にも、正式に条約に加盟したことを公表することになります。批准された条約や規約は、その後国内で公布され、効力を発生します。
 すなわち「批准した」ということは、国がその条約や規約の内容に同意し、その趣旨に添うように尽力することを、公に国内外に約束することです。

 条約や規約を批准した国は、加盟国や締約国と呼ばれます。

 二つの国際人権規約(社会権規約と自由権規約)に関して、日本は1978年5月30日に署名し、1979年6月6日に国会承認、1979年6月21日批准書寄託で批准手続きを終了しました。規約は8月4日に国内で公布され、9月21日に効力発生となっています。

 日本国憲法の第98条2項には、「日本国が締結した条約および確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする」とうたわれています。批准した条約に矛盾する国内法は、改正が必要となります。
 また同じく日本国憲法の第99条には、憲法尊重擁護義務として、「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」と明記されています。

 残念ながら日本の裁判所などでは、批准した国際条約が実際に考慮に入れられるということが少ないのが現状です。法律や行政関係の人々の国際条約に対する不勉強や無関心は、自由権規約および社会権規約、双方の委員会でも問題として取り上げられ、日本政府の報告書に対する最終所見の中で、状況の改善を勧告されています。社会権規約委員会による最終所見:第35段落自由権規約委員会による最終所見 / 外務省:第32段落)

 今、世界は急速に「地球時代」へと変換を遂げつつあります。その中で、日本は有数の経済大国として認められ、世界のリーダーたる役割を期待されています。その期待に応えるためにも、この国に住む私たち一人ひとりが「地球市民」の一員としての認識を持ち、国際的な「人権」の基準を学び、国際社会の約束事を知ることが求められるでしょう。

[文責:渡辺玲子 / 監査:中井伊都子]
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 解説1 基本的人権と国際人権規約
 解説2 日本と国際法との関係
 解説3 報告義務
 解説4 日本政府の報告書
 解説5 社会権と居住権
 解説6 社会権規約委員会と一般的意見
 解説7 最終所見と政府の姿勢

 「居住の権利」目次
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