適切な住まいって、どんなところ?

建物だけあっても「適切な居住」とは言えません。

適切な居住の権利 一般的意見4
・・・パート II(8)・・・



8。「居住の権利」を知るためには、「適切な住まい」の意味を知ることが大切です。どういう住まいなら、人権規約でいう「適切な住まい」と呼べるのでしょうか。
 住んでいる国や文化、気候などによって、「適切」の具体的な内容はちがってくるでしょう。でも、条件はちがっても「これだけは共通ですよ」という基準はあるはずです。
 「適切な住まい」がどういうものか、7つの項目(a〜g)を見てみましょう。


(a) 住んでいる人が、安心して住み続けられるように、法的に守られていること。

 安心して住み続けられなければ、「適切な住まい」とは言えません。むりやり追い出されたり、出て行けという嫌がらせやおどかしを、受けることがあってはならないのです。すべての人は、自分の家に住んでいる人も、家を借りている人も、緊急用の住まいや非公式な住まいに住んでいる人も、こうした追い立てから、法律で守られていなければなりません。
 もし追い立てにあっている人がいれば、国には国家として、その人々と誠実に話し合いをして、すぐにでも「法的に安全」な状態をつくる義務があります。


(b) 水やエネルギー、衛生や救急の施設やサービスを利用できること。

 安全で健康的な暮らしを気持ちよく送るために、「これは欠かせない」ということがあります。安心して飲める水があること、料理や暖房、明かりのための電気やガスが使えること、食べ物をたくわえておけること、衛生的なトイレ、せんたく場、排水設備があること、ゴミをすてられること、いざというときに頼りにできる救急や消防があること、そして天然の資源を利用できることなどです。





(c) 費用が高すぎないこと。

 ローンや家の維持費が高すぎて、ほかのことを切り詰めなくてはやっていけない。家賃がめちゃくちゃに高い、いきなり値上げになる。これでは住んでいる人は困ります。住まいの費用に無理がないように、国は、お金がなくて住まいを手に入れることのできない人のための補助金制度をつくったり、家賃が高すぎたり値上げしたりしないように監督する制度をつくるべきです。
 建物を建てる材料が天然資源だというところもありますが、そういう国では、人々が建築材料を手に入れられるように、国が注意をしなければなりません。





(d) 住むのに適していること。

 住むのに適していなければ、もちろん適切な住まいとは言えません。十分な広さがあって、暑さ寒さや湿気、雨風をしのぎ、病気をはこぶ害虫をふせぐ住まいでないといけませんし、すぐこわれてしまうような、構造上の危険のある住まいは、適切とは呼べません。
 世界保健機構(WHO)は、住環境と病気の関係についての「住まい・健康の原則」をつくりました。この原則は、不適切で欠陥のある住まいに住んでいる人は、死亡率や病気にかかる率も高いと述べています。われわれ委員会は規約メンバー国に、この原則に照らし合わせて政策や対策を立てるよう、奨励しています。









(e) 誰でも入居できること。

 どんなにすばらしい住まいでも、入居できなければ適切な住まいとは呼べません。入居しようとする人々を差別しないのはもちろんのこと、弱者の立場にある人々が、住居を不自由なく選んで入居できるように、積極的な措置がとられるべきです。これはお年よりや子ども、身体障害者や末期患者、HIVウイルス保持者や持病のある人、精神病者、自然災害の被災者、災害の起きやすい地域の住民などです。住宅法や住宅政策は、こうした人々の声をしっかりと取り入れて、つくられなければなりません。
 また土地のない人、やせた土地しかない人々に、土地を持てるような道をひらくことは、政策目標の中心におかれるべきです。
 すべての人には、平和に、誇りを持って生活をする権利があります。そうした場所を得る権利を、現実のものにするために、政府には大きな役割をはたす義務があります。





(f) 場所に無理や不都合がないこと。

 まわりの環境も大切です。仕事先や学校から遠すぎると、通う時間や費用が大変ですし、病院などの健康にかかわる設備、児童ケアセンターなどの社会的な設備があることは、毎日の生活を安心して送る上で大切なことです。これは大都市でも田舎でも同じです。
 また、健康を害する公害がないことも重要です。地域が汚染されていたり、すぐ近くに公害の汚染源があるようでは、住んでいる人の健康の権利が守られているとは言えないでしょう。










(g) 住む人や土地の文化に合っていること。

 人にはそれぞれ、なじんだ文化があります。その文化を表現する住まいが、その人にとっての適切な住まいです。家を建てる方法、家を建てる材料、その国の政策、いずれもそうした文化的アイデンティティを打ち出せるように、助けるものでなければなりません。
 住宅の分野は大きく発展して、近代化しています。その中で、住まいの文化的側面が損なわれないこと、そして適切な近代設備が保障されていることが大切です。



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専門家バージョン  英語原文(国連のページ)  「居住の権利」目次



[訳/文責:渡辺玲子 / 監査:中井伊都子 / イラスト:たけしま さよ]

 これは専門知識がなくても理解しやすいように、訳に補足説明を加えるなどして作られています。用語の訳など、外務省と異なる部分があることをお断りします。詳細については、英語原文、専門家訳バージョンをごらんください。

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