適切な居住の権利 一般的意見4
・・・パート III(9〜13) ・・・
9。「適切な居住の権利」を、他の人権から切りはなして考えることはできません。すべての社会で、居住の権利を現実のものとし、維持していくためには、他の権利の実現は欠かせません。他の権利とは、表現の自由や結社の自由(貸し家の住人が地域の組織と連携するとか)に対する権利、居住地を選ぶ権利、公の決め事に参加する権利などです。「人間の尊厳」と「差別を受けない」という原則については、すでに述べました。プライバシー、家族や家庭、通信などに、勝手な、または不法な干渉を受けない権利も大切です。
10。社会権規約は、その国の発展状況に応じて徐々に実現していく権利、と言われています。しかし発展の度合いに関わらず、どの国でも、すぐ実行しなければならない措置はあります。世界住居戦略や国際的な分析によって、認められていることですが、居住の権利をおし進めるために必要なことは、二つだけです。一つは、政府が居住権を侵害するような行為を取らないこと、そしてもう一つは、当事者である人々の「自助」が可能となるように、手助けをすることです。もし資源などの理由によって、こうした措置をとれないというのであれば、その国はできるだけ早く国際協力の要請を行い、かつ委員会にも報告することが大切です。これは社会権規約第11条1項、22条、23条条によります。
11。国は、不利な状況にある人々が正当な優先順位を受けられるように、とくに配慮しなければなりません。すでに有利な立場にいる人々が、他の人々を犠牲にしてさらに有利になるような政策や立法は、認められません。生活条件を改善には、世界の経済状況や他国に借金があるなどの、外的な要因が大きな影響力を持ちます。また実際に1980年代には、多くの国で、全体的な生活の条件が悪化しました。しかし状況に関わらず、規約が国家に約束させた義務は変わりませんし、また経済的に切迫した時にこそ、社会権の意味はより重要になるのです。これは一般的意見2(1990年)でも述べられていることですです。
国が作った政策や法律のせいで、生活や住宅状況が一般に悪くなり、それを補う措置を取らないのであれば、国は社会権規約が求める義務に違反している、と委員会はみなします。
12。もちろん適切な居住の権利を完全に実現するために、どういう方法が最適なのかは、国によって異なるでしょう。しかし、権利の実現の目的のために必要ならば、社会権規約の加盟国は、いかなる措置でもとることを要求されています。すなわち、「住まいの条件を良くするための目標を定め、この目標に向けて、利用できる資源を最も経済的な方法で利用し、実行の責任が誰にあるか、どれだけの期間でするのかを設定する」ような住宅政策を国内でとるように、加盟国は常に要求されているのです。これは世界住居戦略の32パラグラフに述べられています。ほかの人権の尊重という意味においても、また戦略の適切さや効率性という理由においても、全ての当事者(ホームレスや貧しい住まいで生活する人々なども含む)の希望や意見は、戦略に反映されていなければなりません。そのためには、誠実な話し合い、決定への当事者参加が不可欠です。また、国内の関連法(経済、農業、環境、エネルギーなど)と社会権規約11条との間に矛盾がないように、官庁と地方行政とが確実な協調性を持たなければなりません。
13。住宅状況を効果的に監視するということは、即時の効果が見込まれるもう一つの国家の義務です。社会権規約の加盟国には、11条1項によって、居住の権利の実現に向けて、どういう措置をとったかを、報告する義務があります。特に、ホームレスや、貧しい住まいで生活している人々の状況を正確に把握するために、必要な措置はすべて採っているということを、その国が単独で行ったものであれ、他国との国際協力によって行ったものであれ、報告することが義務づけられているのです。報告書の形式や中身については、改訂版一般的ガイドラインによって、「社会の中でも、住居について不利益や悪影響を受けやすい人々についての、詳細な情報の提供が必要」ということが、強調されています。特に、ホームレスだったり貧しい住環境にある人々、生活に関する基本的な設備を使えない人々、「不法」居住地の人々や強制立ち退きの対象となっている人々、そして収入の低い人々が、これにあたります。
これは専門知識がなくても理解しやすいように、訳に補足説明を加えるなどして作られています。用語の訳など、外務省と異なる部分があることをお断りします。詳細については、英語原文、専門家訳バージョンをごらんください。
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