適切な居住の権利 一般的意見4

・・・ パート IV(14〜19) ・・・


14。適切な居住の権利に関する義務を国が果たすためには、適切なものであれば、公的措置と民間の措置とが混じることはあり得ます。公的資金を効果的に使って新しい住宅を建設している国もありますが、たいていの場合、国には公営住宅によって住宅不足を解消する能力はありません。これは、これまでの経験からわかることです。ですから国は、居住の権利の実現のために全力で義務を果たすと同時に、「自助能力付け」戦略を進めることが、奨励されます。義務とは、本質的には、すべての人の居住の権利のために、なるべく短期間で、可能な手段をすべて利用して、措置を講じているのだと、証明することです。

15。求められる措置の多くは、資源の配分や一般的政策イニシアティブに関連してくるでしょう。しかしこの文脈において、立法措置や行政措置は過小評価されるべきではありません。世界住居戦略(66-67)は、これらの重要性への注意を促しています。

16。適切な居住の権利が、憲法で守られている国があります。こうしたケースにおける、法的で実用的な重要性を学びとることに、委員会は大きな興味を持っています。このような保護が役に立ったという事例や方法についての詳細が提供されるべきです。

17。委員会は、適切な居住の権利の構成要素の多くは、少なくとも国内法による救済の提供に一致すると見ています。法的制度によって、その領域には次のものが含まれますが、これらに限られるという訳ではありません。

(a) 裁判所からの差し止め命令によって、計画的な強制立ち退きや住居の取り壊しを止めることを目的とする、法的な訴え … (b) 不法な強制立ち退きが起きた場合の、賠償を求める法的手続き … (c) 家賃や住居のメンテナンス、人種その他による差別についての、(公民問わない)家主、地主によって実行、支持された、不法な行為に対する苦情申し立て … (d) どの住宅を与えられるか、あるいは入居できるかどうかについての、あらゆる差別に対する申し立て … (e) 健康的ではない、あるいは住むのに適さない住居の状態についての、家主への苦情申し立て。  住居を失う人々が大幅に増えた場合など、法制度によっては、集団訴訟を進める可能性を模索することも適切かも知れません。

18。強制立ち退きの事例が、社会権規約の求めるところに合致しないのは明らかです。こうした事例が正当化されるのは、極めて例外的な状況において、そして国際法の原則に従っている場合だけです。

19。最後に、11条1項は、国が「自由な合意に基づいた国際協力の本質的な重要性」を認識することを義務として、結論づけています。一般に、国際援助全体のうち住居や人間の定住に向けられているのは5パーセント足らずに過ぎず、またこうした基金が、不利な立場にある人々の居住のために使われるということは、ほとんどありません。社会権規約に加盟している国は、援助提供国の立場であっても、その援助を受ける立場であっても、資金の実質的な額を、より多くの人が適切な住居に住めるようになる目的で使うことを確実にしなければなりません。構造調整措置を推進する国際金融機関は、これらの措置が居住の権利に妥協を強いることがないないことを、確実にするべきです。国際財政協力をはかるときには、国は、他国からの資金援助がもっとも効果的な適切な居住の権利に関する分野を提示するように、模索すべきです。
 そしてこれらの要求がなされるに当たっては、当事者となる人々が何を必要としているか、どういう見解を持っているかが、充分に考慮に入れられるべきです。



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専門家バージョン  英語原文(国連のページ)  「居住の権利」目次



[訳/文責:渡辺玲子 / 監査:中井伊都子]

 これは専門知識がなくても理解しやすいように、訳に補足説明を加えるなどして作られています。用語の訳など、外務省と異なる部分があることをお断りします。詳細については、英語原文、専門家訳バージョンをごらんください。

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